日経ビジネスオンライン読者の皆様、こんにちは。福島県の総合南東北病院で外科医をやっております、中山祐次郎と申します。まず少し近況から。
先日、上京しまして両国国技館で相撲を観てきました。相撲は昔からよくテレビでは観ていましたが、実際に観るのはこれが初めて。高校時代からの友人が苦心して升席のチケットを取ってくれたおかげで、土俵からずいぶん近いところで観戦することができました。私が観たのは一月場所の始まった頃で、横綱が次々に休場してひとり鶴竜だけになっていたタイミング。「ちょっと盛り上がりに欠けるかな」などと思っていたのですが、全くそんなことはありませんでした。

相撲は朝8時半ころから、まず序ノ口と呼ばれる新人力士の取り組みから始まります。私は昼の2時くらいから観ていたのですが、ちょうど十両の土俵入りから始まりました。相撲界で一人前と見なされるのはこの十両からだそうで、力士たちは真剣な取り組みをしていました。しかし場内はまだお客さんもちらほら、がやがやと落ち着かない雰囲気です。観ている人もわずか。私が力士だったら、この中で真剣勝負をするのは嫌だなあ。きっと屈辱に感じてしまうでしょう。でも、この中から明日の横綱が生まれるのだと思うと、胸がいっぱいになり、気づいたら食い入るように観ておりました。頑張れ、若い力士たち。

そして、4時くらいになりいよいよ幕内の土俵入り。華やかな化粧廻しをまわし、堂々とした立ち居振る舞い。ああ、これが国技なのか。私は見とれてしまいました。戦いの前の、研ぎ澄まされた精神がすべての力士の顔に出ています。

取り組みは終わり、ものすごい量のお土産が渡されました。もちろんこんなに食べきれませんが、お皿などいただけるのですね。なるほど、お土産込みの値段になっているようです。

観終わり、両国でちゃんこを食べながら思いました。取り組みの、あの肉体と肉体の激しいぶつかり合い。そして力士たちの人生を乗せた、丸い土俵の静謐(せいひつ)。そのコントラストが、単なるエンターテインメントや格闘技の趣を超えて、もはや芸術性を醸しているのです。ぜひまた観に行きたいと思いました。テレビとは全く違うのですね。
さて、前置きが長くなりました。今回はいつもの連載と違うスタイルです。
今回は、「父よ、あなたはどう生き、どう死ぬのか」というタイトルで、文字通り父への私信というかたちをとりました。この中で、私はこれからの日本における「死」についてデータを交えお話ししたいと思います。父には無許可であり、息子から個人情報を流されると怒りそうなのでほどほどにします。九州出身の父はだいたい65歳くらいの男性であり、今も元気に働いています。年齢をはっきり書くと怒られそうなので、手紙の中では65歳としました。

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