ほとんどの外科医が病院から帰れない

 これにプラスして、月に1日の当直(ほぼ徹夜勤務です)、月2~3日の待機(平日夜間や土日の日中~翌朝まで、呼ばれたらすぐに行けるようにしておく)、土日は基本的に全て9時から出勤して、何もなければ11時ごろに帰宅します。ですが、平日1日を毎週研究日としていただいており、その日は朝の回診で基本的に業務は終了しています。

 こうやって書くと業務時間はかなり長いような気もしますが、これでも外科医としてはだいぶ恵まれた方です。理由は、「当直回数が月1回のみ」「週1日の研究日の存在」でしょう。

 県内の他の病院のある外科医は「月10日当直」をやっていると聞きました。そうなると、ほとんど病院から帰れない生活です。あまり他の業界の人からは信じてもらえませんが、これくらいの業務時間は医師にとってそれほど特別なことではありません。

 これは私個人の働き方ですが、医者の勤務時間については色々な調査結果があります。ここで提示するのは、総務省調査のこんなデータです。これを見ると、週に60時間以上働く人が多いのが分かります。ちなみに私は、計算するとちょうど週60時間くらいでした。医者の勤務時間が長いことはお分かりいただけたと思います。

医師の働き方改革は延期された

 あまり知られていないことなのですが、運送業や建設業、そして我々医師については、国会で議論されている労働基準法の改正が実現しても、5年間は猶予があることになっています。理由は、人手不足だからということですが……。厚生労働省がうまく立ち回り、この法改正の「例外」に医者も入れたそうです。なかなかうまいこと、やりますね。いきなりこんな法改正があったら、医療界は大混乱しますから。

 私としては言いたいことは山ほどありますが、ともかく私たち医師の働き方改革は延期されています。そして今、特別に「医師の働き方改革に関する検討会」という会が開かれ、議論されています。

 その議論の内容について、議事録には非常に面白いことが書かれています。それは、「医師は労働者かどうか」という議論です。ある人が「医者は(労働基準法上の)労働者なのか?」と問い、法律の専門家が「議論の余地はないので、この話は閉めさせて」と答えています(詳細はこの議事録にあります)。

 驚きなのは、医者はそもそも労働者なのか、という意見があるということです。これはつまり、「医者は労働者ではなく広く社会と市民に貢献する存在であるから、労働基準法の労働者には当たらないのではないか」という意味でしょう。そしてこの発言をしたのが、とある病院の名誉院長である点にも注目しています。こういうエライ先生がこういうことをおっしゃるうちは、過労死する医師はいなくならないでしょう。