このインフレ率の動向を筆頭に、日本国内の景気、諸外国の金融緩和の動きなどをトータルで加味して、日銀はテーパリングを開始するか否かを判断しますが、消費者物価の上昇が鈍ればそのきっかけを逃すことになります。

 懸念材料は、北朝鮮情勢です。米朝関係が緊迫すれば、「有事の円買い」が起こり、円高が進む可能性があります。

 ある専門家から聞いた話では、北朝鮮と米国が開戦する確率は15%程度ということです。北朝鮮側から開戦することはまずあり得えません。北朝鮮にとっては、自滅行為ですからね。

 米国も開戦を望んでいません。もし北朝鮮軍が韓国に侵攻すれば、韓国内で何十万人もの犠牲者が出るとの試算があるからです。韓国内に滞在する約20万人の米国人にも被害が及びます。

 では、この「15%」とは何かというと、米国内の世論が強まる可能性と、トランプ大統領の支持率が悪化して窮地に陥り、開戦に活路を見出すという「万が一」の可能性を足し合わせた数字だそうです。

 実際にどうなるかは分かりません。低い確率ですが、米朝戦争が勃発するようなことがあれば、相場は大幅に揺れるでしょう。

過熱している不動産価格が下落し始めた時の経済へのダメージ

 三つ目の懸念材料は、特に重要な要素になります。国内の不動産価格がどう動くか、ということです。

 今、東京の都市部などを中心として不動産ブームが起こっています。「2020年の東京五輪までは、日本景気は好調だろう」と信じている人たち、主に中国人が都内マンションなどの不動産を爆買いしてきました。

 不動産価格が上昇しているのは、都内だけではありません。国土交通省が3月に発表した2017年の公示地価によると、大阪府の商業地の上昇率は5.0%と、昨年に続き1位となりました。主に、インバウンド消費に支えられている大阪府中央区や北区の上昇率が高いとのことです。

 ちなみに、私はこの「20年まで好景気説」には疑問があり、景気後退はもっと早い段階でやってくると考えています。いずれにしても、一つだけ一致しているのは、20年以降の景気は悪化するだろうということです。

 日本は人口減少が進んでいますから、一般的に考えれば国内の不動産価格は長期的に下落傾向となるはずです。それが、主に中国人投資家たちが都内のマンションを次々と購入したこともあり、高騰してきたのです。

 問題は、これまで買ってきた人たちがどの時点で売りに転じるか、という点です。

 全員が20年の五輪開催直前まで待って売るとは限りません。その前に売りが始まる可能性もあります。一度価格が下がり始めれば、みんなが一斉に売るでしょう。その期日は近づいています。

 ただ、今のところ金融機関は、相続対策でのアパートへの融資は増加しましたが、80年代後半のバブルの時期ほど不動産取引に貸し込んでいるわけではありません。企業に対する不動産向け融資も多くはありません。中国人が日本の不動産に投資するための資金は、おそらく中国で調達したものと思われます。

 その点から考えますと、不動産価格の下落が起こったとしても、かつてのバブル崩壊のようなインパクトはないと思います。悪影響は小さくはありませんが、政府は財政赤字残高を拡大しているものの、企業は自己資本比率を上げて体力をつけていますし、個人金融資産も十分にあります。実体経済に深刻な影響があるとは考えにくいでしょう。

 以上の点から、18年の経済は7割程度の確率で好調を維持するのではないかと私は考えています。

 ただし、景気後退の波は必ずやってきます。きっかけは分かりません。北朝鮮情勢なのか、欧米景気の減速なのか、円高なのか、不動産価格の下落なのか、あるいは別の要因なのか。様々な要因によって、景気後退が始まる可能性は否定できません。今回指摘したポイントをまずは注視することが肝要です。



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■変更履歴
掲載当初、「しかし、一部の非正規雇用者の時給は大幅アップしているものの、全体で見ると…」としていたところを、「そのため、一部の非正規雇用者の時給は大幅にアップしています」と改めました。訂正します。[2018/12/21 11:30]