11月19日、仏ルノー・日産自動車・三菱自動車の会長を務めるカルロス・ゴーン氏が2015年3月期までの5年分の報酬を約50億円少なく有価証券報告書に記載させた疑いで、東京地検特捜部に逮捕されました。さらに直近3年分の役員報酬も少なく記載した疑いがあるとして、12月10日には再逮捕されています。
ほかにも、オランダの子会社がブラジルやレバノンの高級住宅を購入し、ゴーン氏が無償で利用していることや、数千万円に上る家族旅行の代金を日産に負担させていたことなどが報じられています。
これに対しゴーン氏側は、元東京地検特捜部長の大鶴基成氏を弁護人に迎え、徹底的に争う構えを見せています。
ゴーン氏の行為が犯罪かどうかという問題は簡単には決着しそうにありません。その白黒よりも私が関心を持つのは、今後、ルノーによる日産の支配がどうなっていくのかという点です。今回は、日産のこれからのシナリオについて考えます。

ゴーン氏が失脚しても、次の「カルロス・ゴーン」が来るだけ
一連の報道から判断すると、今回の事件は日産の経営陣による“クーデター”と言って間違いなさそうです。日産に対する支配強化の構えを見せてきたルノーのくびきから脱するのが目的です。しかし、作戦を間違えたのではないか、と私は考えています。
一般的には、不正などの内部告発があった場合、まずは社長に伝えられ、取締役会で共有されるはずです。もし私が日産のアドバイザーであれば、ゴーン氏に直接話をするよう助言するでしょう。
一連の容疑が最終的に有罪になるか否かは別として、ゴーン氏にも疑問を持たれる行為があったことは間違いないでしょう。ゴーン氏としても、そんな話は公にされたくはないでしょうから、日産の幹部たちの話に耳を傾けるかもしれません。そこで、不正の疑いがある証拠があるのであれば、ゴーン氏にそれを見せながら「ルノーとの関係をうまく取り持ってほしい。もっと言えば、ルノーによる支配を緩めるように働きかけて欲しい。今後も、ルノーからの圧力をうまく交わして欲しい」と交渉することができたのではないでしょうか。ゴーン氏は、フランス政府、ルノー、日産、そして、その傘下の三菱自動車の「扇の要」でしたからね。微妙なバランスを調整する能力があったはずですし、そのことは彼しか今のところできないはずです。
ゴーン氏の逮捕は内部告発がきっかけと伝えられていますが、私は社内で留めておいた方が、今後の日産にとってよかったのではないかと思います。
この事件が報じられた時、私は大阪のテレビで次のようにコメントしました。「次のカルロス・ゴーンがやって来るだけですよ」と。
そもそも、日産の社長は西川廣人氏です。仮にゴーン氏が有罪となった場合、ここ3年間の虚偽記載もあったわけですから、有価証券報告書に代表者と記載されている西川氏は責任を免れるのでしょうか。もちろん、ゴーン氏が無罪となった場合には、タダで済まされるはずはありません。クーデターを起こした張本人ですからね。
そして何よりも注目すべきは、今後のルノーの動きです。現在、ルノーの15%の株式をフランス政府が保有しています。そのルノーは、日産の43.7%の株式を持っています。
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