以前、本コラム「財政規律はどうなる? 来春までに日銀は出口を」で詳しく述べましたが、私は、日銀が2%をターゲットにしている消費者物価指数(前年比)は、今年の年末以降に上昇幅が大きく低下する可能性があると考えています。

 消費者物価指数が上昇している主な要因である輸入物価は、円安などの要因で17年1月から上昇を始めています。16年8月から10月にかけては、101円から103円程度だった、ドル円レートが今年の同時期では10円ほど円安に振れていますから、その分だけでも、輸入物価は1割程度上昇するのです。しかし、昨年12月あたりからは、ドル円レートは、110円前後でほぼ安定しています。この状況では、今年の年末から来年初にかけては、「前年比」で見ると輸入物価の上昇率が鈍化し始め、それとともに消費者物価も上昇が鈍化する可能性があるのです。

 日銀は、マイナス金利や日銀の保有資産額の急増など、異次元緩和の副作用を考えて、国債買入額をできるだけ早く縮小していきたいと考えているでしょう。しかし、もしここで「テーパリング」と呼ばれる量的緩和策の縮小の実施を発表し、その後に、インフレ率が低下してしまうと「日銀が国債の買い入れを減らしたからだ」と言われかねません。

 だから、表向きには「年間80兆円の国債を買い入れる」としながらも、景気が比較的堅調で、かつインフレ率も上昇している現状では、買い入れペースを落とし、インフレ率の動きを見ながら、もし、今後、インフレ率が低下したら、元のペースに戻していくという慎重路線をとっているのではないでしょうか。

 逆に言えば、私の予想が外れて、年末にかけても消費者物価指数が0.8、0.9、1.0%と順調に上昇していけば、日銀が量的緩和の縮小(テーパリング)を発表する可能性があります。つまり、コストプッシュ型のインフレからディマンドプル型のインフレに移ったという確信が、ある程度持てた時です。

 かつて日銀は出口戦略に失敗して、市場に大きな混乱を招いたことがありました。2000年8月にゼロ金利政策の解除を発表しましたが、当時、米国ではすでにITバブルの崩壊が始まっており、日本の株価もそれにつられて急落していったのです。

 日銀としては、同じ轍を二度と踏みたくないはずです。テーパリングの発表は慎重に判断するでしょう。

 一方で、欧米の中央銀行は量的緩和からの出口を見据えています。特に米国は出口が見えており、欧州も出口の扉を開けようとしているのです。日本だけが出口に踏み出せないのは大きな問題となりかねません。

 このままでは日本の金融政策の異常な状況が、来年にはクローズアップされてしまう可能性があります。そうなれば当然、為替相場が動き、金融市場が大きく混乱する事態も考えられるのです。

 日本の景気拡大が注目された今こそ、金融緩和の出口戦略も実施検討すべきですが、インフレ率との微妙な関係があることも事実なのです。