拡大を続けるドンキに舵取りを任せた

 続いて、ドンキHDの2018年6月期決算を見てみましょう。売上高は前期比13.6%増の9415億円。もうすぐ1兆円に届く規模となっています。営業利益は11.7%増の515億円で売上高営業利益率は5.5%。ユニー・ファミマは2.2%でしたから、2倍以上です。自己資本利益率(ROE)は13.3%と高い水準となっています。

 中長期的な安全性を示す自己資本比率は36.0%。ドンキのような業種ですと20%以上あれば安全と考えられますから、同社の自己資本比率はかなり高い水準と言えます。

 キャッシュ・フロー計算書も見てみましょう。営業キャッシュ・フローのうち、「減価償却費及びその他の償却費」が173億円。これに対し、投資キャッシュ・フローのうち設備投資の状況を示す「有形固定資産の取得による支出」が533億円ですから、減価償却をはるかに超える規模の積極的な設備投資を行っていることが分かります。

 ユニー・ファミマは2018年11月からTOBを実施し、ドンキHDの株式の約20%を取得して筆頭株主となりました。そしてさらに、ユニー・ファミマは保有するユニーの株式の約60%すべてをドンキHDに売却。同社はユニーの全株式を取得したことになります。少しややこしいですが、ユニー・ファミマはドンキHDの株式を保有し、そのドンキHDにGMS部門であるユニーを売却したという構図です。これは、この後説明する伊藤忠商事の戦略とも大いに関係します。

 ドンキHDは今後5年間でユニーの100店舗を業態転換する方針です。

 ユニー・ファミマは、高収益を維持するドンキHDにGMSを運営するユニーの舵取りを任せ、改革を進めようとしているわけです。

 ドンキの店内は迷路のように複雑で、商品がぎっしりと高く積まれる「圧縮陳列」と呼ばれる店作りが特徴です。どこに何があるかが分からない。くまなく探すと、掘り出し物を見つけることができる。こういった陳列方式が、安い商品、面白い商品を探し当てる楽しさにつながり、集客力に貢献していると言われています。

 さらに、ドンキの特色は、立地や店舗に合わせて商品や売り場を決めるという独特の手法を採用しています。今後拡大していくドンキとユニーの新業態店も、「ドンキ流」の店舗に生まれ変わり業績を伸ばしていくことができるのか。非常に興味深いところです。

バランス良く収益を上げる伊藤忠の思惑

 ユニー・ファミマは、総合商社の伊藤忠商事が50.1%の株式を保有しています。今回のドンキによるユニー買収も、伊藤忠商事の思惑もあったと思われます。

 伊藤忠商事の2018年3月期決算を見てみましょう。収益は前期比13.9%増の5兆5100億円。営業利益は9.9%増の3169億円。当期純利益は15.3%増の4317億円。超高収益企業と言えます。ROEも15.8%と非常に高い水準です。

 商社というと、輸出入貿易や国内での販売仲介事業を行う企業というイメージがありますが、今や「投資会社」となりつつあります。

 伊藤忠の「セグメント情報」を見ると、繊維、機械、金属、エネルギー・化学品、食料、住生活、情報・金融、など実に様々な事業を行っていることが分かります。ちなみに、ユニー・ファミマは「食料」事業に含まれます。

 伊藤忠に限らず、現在の総合商社は投資会社化しています。もちろん、各商社によってウエイトを置く事業は異なりますが、投資会社になっていることは変わりありません。そして、多くの分野に投資することにより、事業ポートフォリオを充実させ、安定して高収益を上げようとしているのです。

 その一環として、伊藤忠はもともとファミリーマートを傘下に持っていたわけですが、さらに小売事業を拡大させるために、ユニー、ドンキを含めたポートフォリオを組んだわけです。その中で収益率が低く、成長性に乏しいユニーのGMS事業をどうにかしてテコ入れしたかった。収益を伸ばし続けているドンキの手法を積極的に取り入れようと方針を転換したのでしょう。

 一部の店舗で始まっているドンキとユニーの新業態は今のところ奏功していると言えますが、この先も拡大を続けることができるのか。ドンキ流の戦略は、今後拡大する100店舗においても成功させることができるのか。伊藤忠商事全体の戦略とともに、引き続き注目したいところです。