この先を考えると株価も不安材料でしょう。10月2日に日経平均株価はバブル崩壊後最高値を更新しましたが、その後、世界的な株安などを受け、株式相場は乱高下しています。富裕層を中心とする消費者心理にも悪影響を与える可能性があり、景気の動向は予断を許さない状況と言えるでしょう。

 ちなみに最近の東証1部全銘柄のPER(株価収益率=株価÷1株当たり純利益)は、14.03倍、日経平均採用銘柄は12.60倍(いずれも11月6日時点)ですから、それほど高いわけではありません。この先、貿易摩擦問題などもあり、企業収益も不透明なところもありますが、今のところはそれほど割高感はないと思います。

 以上を踏まえますと、戦後2番目の景気拡大を続けているという点、予算編成や統一地方選挙の時期などを加味しますと、景気の先行きが読みにくくなっていることから、安倍首相が10月15日に消費増税を明言したのは、タイミングとしてはベストだったのではないでしょうか。11月14日に発表予定の2018年7~9月期のGDPがマイナスになりますと、消費増税の発表はやりにくくなりますからね。

企業業績も落ち込み始める可能性が高い

 国内景気の判断材料として、大きなポイントとなるのは企業業績の動向です。

 企業業績は2018年4~9月期決算発表を見る限り、今のところ好調ではありますが、今後、次の2つの要因から落ち込む可能性があると私は考えています。

 まず、消費者心理の冷え込みです。株価の乱高下、気候変動、あるいは、秋も深まり気温の低下などがあると、人々は今まで通りに積極的に消費をしようとしなくなることが考えられます。

 もう一つは、米中摩擦の影響です。前回のコラム「『米国第一』は意外に正しかった」でも述べましたが、米中貿易戦争の勝敗は明確です。

 2017年の貿易統計によると、米国のモノの貿易赤字は7962億ドルであり、そのうち対中赤字は約半分の3752億ドル。一方、中国の貿易収支は4215億ドルの黒字。中国にとっては貿易黒字の大半を米国から稼いでいるわけですから、米国側が輸入品に関税をかければ、中国は大きなダメージを受けることは避けられません。

 中国の2018年7~9月期の実質GDPは、前年同期比6.5%と成長が鈍化しつつあります。中国政府は景気後退の可能性を見越し、早くも強力な景気刺激策を講じようとしています。

 中国政府は、やると決めたら徹底的に巨額の投資をして景気対策に臨むでしょうが、それでも景気は落ち込んでゆく可能性があります。これに加え、今のところはまだ影響が出ていませんが、米国への輸出に大きな影響が出るようなことがあれば、中国経済はかなり厳しい状況に追い込まれる恐れもあるでしょう。

 そうなりますと、日本経済への影響も免れません。トランプ政権は、中間選挙で議会にねじれが生じ、メキシコ国境に「壁」を作るなどの予算をともなう公約を実行するのが難しくなる可能性があるので、これまで以上に対外的には「アメリカファースト」を強調するのではないかと私は懸念しています。これは日本経済にとってもちろんマイナスとなります。今後の貿易政策も含めて、注視し続ける必要があります。

日銀は打つ手なし。経営者は衝撃に備えるべき

 冒頭でも触れましたが、私は最近、お客さまである経営者たちに向けて、「景気後退の衝撃に備えてください」と呼びかけています。これまでお話ししてきたように、日本国内の景気はすでにピークアウトしている可能性があるからです。

 少なくとも、現在の景気の状況がいつまでも続くことはあり得ません。リーマン・ショックほどの衝撃は来ないとは思いますが、これまでの好景気の反動で、業種によっては大きなダメージを被る可能性もあります。経営者は、現在の景気を前提にした経営計画を立てるべきではありません。

 本格的な景気後退が到来した場合、日銀はもう打つ手がありません。日銀が10月30~31日に開いた金融政策決定会合では、短期の政策金利をマイナス0.1%、長期金利にあたる10年物国債利回りをゼロ%程度に誘導する金融緩和策の維持を決定しました。

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