米国ファーストは、単純に中間選挙に勝つための施策にみえますが、中長期的には、「肉を切って骨を断つ」という戦略であるとも捉えられるのです。そう考えると、トランプ大統領の打ち出す政策はある意味天才的ではないかとすら感じます。

 さらに、米国の主要産業の一つである自動車の先行きも考慮されている可能性があります。米国は、中国のEV(電気自動車)化を危惧しているものではないかと思うのです。

年間3000万台を生産する世界最大の自動車生産国となり、米国を大きく上回った中国ですが、精密な技術が必要なエンジンを使う現在の自動車では日本や欧米のメーカーに一日の長があります。

 そこで中国政府が打ち出しているのはEV化です。EVでは部品の点数も減り、中国メーカーが相対的な競争力を持てるとみているのです。もちろん、PM2.5等への環境対策にもなります。共産主義国ですから、政策を打ち出すことで、一気にEV化が進む可能性があります。中国の自動車産業が急速に拡大し、輸出国となることも考えられるのです。

 司馬遼太郎さんは、「欧州やアジアは文化の国、米国は文明の国」と表現しています。文化の国は外国のものに排他的な面がありますが、文明の国は「いいものであれば、受け入れる」という傾向があります。

 もし、中国でEV化が進み、高性能かつ価格が安い自動車メーカーが誕生すれば、米国人は中国の電気自動車を積極的に購入するでしょう。地球環境に対する意識の高い層も増えていますので、ますます電気自動車の需要は高まると思われます。

中間選挙後、米国ファーストはますます強硬になる

 問題は、米中貿易摩擦がいつまで続くのか。どこまでエスカレートしていくのか。

 11月6日に控える米中間選挙では、全員が改選される下院では与党の共和党が負けるのではないかとの見通しが強まっています。実際にどうなるかは分かりませんが、今のところ、世論調査をベースに考えると負ける可能性は高い。

 中間選挙で共和党が勝利すれば、トランプ大統領はもちろんこのまま米国ファースト路線を維持するでしょう。では負けた場合はどうなるのか。負け方にもよりますが、次の大統領選のために、より強硬に米国ファーストを進める可能性が高いと私は考えています。

 つまり、どちらに転んでも、米国ファーストが強化される可能性が高いというわけです。

 トランプ大統領がどこまで考えているかは分かりませんが、米国ファーストは、ここまで説明したように中長期的には米国にとって大きなメリットがあると私は考えます。対抗策が限られる中国は、貿易摩擦による経済の失速を見据え、国内の景気対策に乗り出しています。しかし、劣勢に立っていると見なされ、人民元売りも進んでいます。

 今後しばらく、中国経済は厳しい状況が続くのではないでしょうか。習近平国家主席は、米中間選挙後も貿易摩擦が続くシナリオを最も恐れているでしょう。