中央銀行のデジタル通貨が発行されると、どんなことが起こるでしょうか。

 中央銀行のデジタル通貨ができれば、いまの仮想通貨のように価格が乱高下するリスクは大きく下がります。決済の利便性という点でも、仮想通貨に引けを取りません。安全性もブロックチェーンで確保されています。日本の一部の銀行も自国通貨に対して相場の動かないデジタル通貨の発行を検討しています。

 すると、仮想通貨のうち需給要因での利幅を狙う投機マネーを除けば、決済性という点では、かなりの部分がデジタル通貨へシフトするのではないかと思われます。下手をすれば、仮想通貨自体の存在価値が減少し、一部の仮想通貨は消滅する可能性も否めません。

仮想通貨は本物の金塊なのか?

 先にも触れましたが、仮想通貨はマイニングによって「発掘」されます。理屈としては、金塊を掘り起こすのと似ています。

 仮想通貨の価値は何なのか。多くの人が「価値がある」と信じているからだけです。

 日本の1万円札も、原価20円そこそこの紙でしかありません。それがなぜ1万円札として使えるかと言えば、みんなが1万円分の価値がある通貨だと信じているからです。仮に、皆さんが給料を弱小国の通貨で受け取るとなったら、どう感じるでしょうか。もらうのだったら、日本円や米ドルで欲しいと思うのではないでしょうか。それは、通貨に国力の裏付けがあるからです。

 そう考えますと、将来的も含めて仮想通貨に本当に価値があるかどうかは、現時点では分かりません。私は、正直なところ、仮想通貨は価値のベースが不明瞭ですから将来性には不安があると考えています。

 1600年代、オランダで「チューリップ・バブル」が起こりました。チューリップの球根が高騰して、一本で家が一軒買えるほどの価格にまでなったのです。しかし、当然のことながら、バブルははじけてしまいました。それと似ているようにも感じます。

 もう一つ、疑問があります。8月にビットコインが分裂する形で「ビットコインキャッシュ」という別の通貨が誕生しました。ある価値があるとされるものが2つに分かれただけですから、元となるビットコインの相場は新しく分裂した通貨の分だけ下がるはずです。ところが、ビットコインの相場は下がりませんでした。この点も、価値の面からは理解し難いものです。やはり需給だけで相場が動いているとしか思えません。

 仮想通貨は、本物の金塊なのか。あるいは石ころなのか。今は断定ができません。苦労してマイニングしたものが本当に価値があるかどうかということです。もし、中央銀行がデジタル通貨を発行したら、その時に仮想通貨の真価が問われるのではないかと思います。

 私は古い時代の銀行マンでしたから、余計にこうした懐疑心を抱いてしまうのかもしれませんが、今の仮想通貨に対する過熱ぶりは少しおかしいのではないかと思わざるを得ません。