60歳で定年を迎え、退職してのんびりと暮らす──。かつては当たり前のように思われていた老後プランですが、今ではほんの一握りの人たちしか、その選択はできなくなりつつあると感じます。
総務省統計局が発表した2017年の「家計調査報告」によると、50代に家計の支出のピークを迎えるにもかかわらず、働いていたとしても収入は40代と比べても横ばいです。さらに60代以降は、仕事をしなければ、家計収支は月平均で4万~16万円の赤字となり、よほどの預貯金がなければ生活がかなり厳しい状況に陥ってしまうのです。
平均寿命が延び「人生100年時代」と言われるようになりましたが、私たちは、60歳以降の生活をどのように考えていけばよいのでしょうか。今回は、家計調査報告を見ながら、世代ごとの傾向を分析します。

家計収支、何にお金を使っているのか
まずは、「二人以上の世帯のうち勤労者世帯の家計収支」から見ていきましょう。働いている人のいる家計の数字です。
2017年の月平均では、「実収入」は53万3820円。一方、支出は、税金や社会保険料などの「非消費支出」が9万9405円、生活を維持するために必要な支出である「消費支出」は31万3057円。家計の収支は12万1358円の黒字です。その分、将来に対して蓄えを増やしているのです。これはあくまでも働いている人がいる家計の平均の数字です。
最も大きなウエイトを占める「消費支出」は、主にどのような用途に使われているのでしょうか。
「消費支出の費目別」を見てみましょう。なお、こちらは勤労世帯だけでなく非勤労世帯を合わせた全体の数字ですので、消費支出は先ほどより減って、28万3027円。その最も大きいのは「食料」の7万2866円で25.7%を占めます。この数字が、いわゆる「エンゲル係数」です。
続いて大きな要素は、「交通・通信」の3万9691円(14.0%)。うち「自動車等関係費」が2万1062円(7.4%)。地方在住者は自動車での移動が必須ですので、大きな構成比となっています。
それ以外に大きいのが、「通信」の1万3270円(4.7%)。これは「被服及び履物」の1万806円(3.8%)を上回ります。ファッションよりもスマホや携帯にお金がかかっているということです。
注目すべきは、「教養娯楽」の2万7958円(9.9%)。消費支出の1割近くになります。最も大きな要素は、「教養娯楽サービス」の1万6700円(5.9%)。コンサートや美術館、映画館などが含まれます。
以上が、平均的な消費支出の状況です。
自動車を含めた交通費や通信費、さらには教養娯楽費を、老後になってどれだけ減らすか、あるいは増やすのかは、それぞれのライフスタイルや生活パターンによっても違ってきますね。
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