続いて、地域別の業績をまとめたセグメント情報を見てください。売上高、利益ともに大きいのが米州で、全体の営業利益の約3割を稼いでいます。米州のうち大半を占めるのは米国です。つまり、タカタの主戦場は米国だったわけです。

 その米国を中心に、エアバッグの異常破裂事故が起こってしまいました。しかも、同国は訴訟社会です。不具合が発覚した時点で、もっと大変なことだと思って早急に対応していれば、ここまで問題は拡大せず、タカタの結末は違っていたかもしれません。

 残念ながら、タカタの対応はかなり遅れました。問題が深刻になった2014年の時点でも、同社は「構造的な欠陥を示す証拠はない」と主張していたのです。

公の場にほとんど姿を見せない高田重久社長

 6月26日の民事再生法の申請を発表する記者会見に出席したタカタの高田重久会長兼社長が、その前に公の場に姿を見せたのは、15年11月に米運輸省・高速道路交通安全局(NHTSA)から罰金を科されたことについて発表した会見以来のことです。特にここ2年ほどは、深刻な事態に陥っていましたから、高田社長は先頭に立って公の場に出てきて、ユーザーや自動車メーカー、そして株主にもっと十分な説明をするべきだったと思います。

 6月の会見では、こんな発言もありました。「なぜ起きたのか非常に不可解だし、いまだに(問題の)再現性がない」「予見不可能だったとはいえ、問題の解決をしなくてはならない」。

 実際に多数の事故が起き、死傷者が多く出ているわけです。自動車メーカーも多大な迷惑を被っています。この発言は、あまりに不誠実に映るのではないでしょうか。

 私は、ここに根本的な原因があると思います。経営者のリーダーシップのあり方が問題なのです。

 経営コンサルタントである私は、経営者たちに向けたセミナーを定期的に開いています。そこで繰り返し申し上げているのが、「経営者が人を動かすためには、二つの覚悟が要る」ということです。

 二つの覚悟とは何か。

 一つは、「先頭に立って行動する覚悟」です。戦前に海軍のエリートを養成した海軍兵学校では、「指揮官先頭」ということを徹底して教えていました。「指揮官たる者は、常に先頭に立って行動すべきだ」ということです。

 二つめの覚悟は、自分の権限内で起こることについて、「責任を取る覚悟」です。特に社長は、会社や事業に係るすべてに責任を取る覚悟がなければ、社員はついてきません。

 私の経営コンサルタントの大先輩に、一倉定(いちくらさだむ)先生という方がいらっしゃいます。中小企業のオーナー経営者たちに非常に慕われた方でした。

 一倉先生は、よくこんなことを仰っていました。「リーダーとして成功したければ、電信柱が高いのも、郵便ポストが赤いのも、すべて自分のせいだと思え」。まさに、「責任を取る覚悟」を表現した言葉です。

 その点、高田社長は、先頭に立つことはほとんどありませんでしたし、責任も取りませんでした。いまだに被害者に謝罪もしていません。その時点で、彼は経営者として失格だと言わざるを得ません。