今、自動車メーカーが独自に開発しているのはエンジンが中心で、その他の部品の多くは自動車部品メーカーから調達しています。つまり、エンジンは自社製品の“要”となっているのです。

 ところが、電池とモーターで動くEVはエンジンが要りません。極端な話、自動車メーカーではなくても自動車の製造が可能になるのです。しかも、EVは部品点数も大幅に減りますから、電池の性能が上がれば、エンジン車よりも生産コストが安くなる可能性があるのです。

 そういった流れを考えますと、EUが日本から輸入する自動車に課している関税が完全に撤廃となる8年目まで、日本の自動車メーカーが優位性を維持し続けられる保証はありません。自動運転車の問題もあります。世界の自動車業界の構図が少なからず変わっている可能性は否定できません。EUも、それを見込んでいる可能性がないとは言えません。

日欧EPAは経済よりも象徴的な意味合い大きい

 もう一つ、見ておかなければならないのは、貿易の推移です。2004~2016年の輸出入額を追ってみましょう。

2016年 貿易の推移(対世界)
(出所:財務省)

 日本の「対世界」の輸出入額を見ると、ざっくりではありますが、2つのポイントが見えてきます。1つは、円レートの影響もありますが、一時は80兆円を超えていた輸出額はこのところ大体70兆円前後の水準を保っており、それほど大きな変動やトレンドの変化がないことです。

 もう1つは、福島第一原発事故が起こった2011年から2015年までの間、貿易赤字が続いていたことです。原発停止に伴って火力発電の燃料となる液化天然ガス(LNG)の輸入が増えたことが主な要因です。一時は貿易赤字額が12兆円まで膨らんでいましたが、LNG価格に影響を及ぼす原油価格の下落などがあり、2016年にようやく黒字に転じました。

 続いて、「対EU」の推移を見てみましょう。

2016年 貿易の推移(対EU)
(出所:財務省)

 輸出額は、10年ほど前は10兆円を超えていましたが、2009年以降は8兆円を切る水準で、このところは大きな変動はありません。一方、輸入は緩やかな増加傾向にあります。その結果、かつては4兆円前後の貿易黒字だったのが、2012年以降は貿易赤字が続いているのです。

 以上の点を考えますと、日欧EPAが日本経済に与えるインパクトは当面はさほど大きくはないと思われます。

 いずれにしても、影響が出るのはかなり先の話です。EUは2019年初めの協定発効を目指していますが、EU28カ国の議会承認を得るためには、予想以上に時間がかかる可能性もあります。さらには、主要品目である自動車関税の完全撤廃は8年以上先のことですし、先にも触れたように、その頃まで自動車産業の日本の優位性が保たれているかどうかは未知数です。

 ただ、保護主義を貫こうとする米国を牽制するために、G20直前に大枠合意まで漕ぎ着けたことは、政治的にとても大きな意味があると感じます。この先も対EUはじめ、貿易額の推移を見守っていきたいものです。