2013年から続いていた日欧経済連携協定(EPA)の交渉が6日、大枠合意に達しました。発効すれば、世界の人口の8.6%、国内総生産(GDP)では世界の28%を占める最大規模の自由貿易圏が誕生することになります。保護主義に偏りがちなトランプ大統領も参加するG20直前に合意したことは、政治的意味合いは大きいと思いますが、重要なのは日本経済にとってどれだけのインパクトがあるのかという点です。

 合意の具体的内容は、EUからの輸入は、ワイン、パスタ、革製品などの関税が最終的に撤廃。カマンベールやモッツァレラチーズなどソフト系と呼ばれるチーズも、新設する輸入枠内について関税が撤廃となります。チーズにだけ輸入枠を設けたのは、これから始まるTPP11の交渉において、チーズ分野で譲りたくない日本側の思惑があるからだと言われています。一方、日本からEUへの輸出については、主要品目である自動車の関税を段階的に下げ8年目でゼロに、自動車部品は大半が即時撤廃となります。

 今回は、貿易統計を見ながら、日欧EPAが日本経済に及ぼす影響について考えてみたいと思います。こういう場合、全体像をとらえるとともに、具体的な数字を見ていくことが大切です。

日欧EPAが発効すれば欧州からの輸入チーズが安くなる見通し(写真:中尾由里子/アフロ)
日欧EPAが発効すれば欧州からの輸入チーズが安くなる見通し(写真:中尾由里子/アフロ)

日本にとってEUは、第3位の貿易相手

 対EU貿易は、日本にとってどのような位置づけになっているのでしょうか。

 財務省が発表した2016年の貿易統計によると、日本の輸出総額は70兆392億円。輸入総額は65兆9651億円。差し引くと4兆741億円の貿易黒字を確保していることになります。

2016年 主要国・地域別の貿易動向
2016年 主要国・地域別の貿易動向
(出所:財務省)
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 そのうち、EUへの輸出額は7兆9821億円。輸入額は8兆1361億円。1540億円の貿易赤字となっています。

 ほかの主要国(地域)との状況も見てみましょう。米国への輸出額は14兆1431億円。輸入額は7兆3084億円。6兆8347億円の貿易黒字です。日本は米国から膨大な貿易黒字を稼いでいますから、「結果の平等」を求めるトランプ大統領は、日本に対して今後も貿易黒字削減のプレッシャーをかけてくる可能性が強いと思います。

 アジアは、輸出額37兆1098億円。輸入額は33兆1883億円。3兆9215億円の貿易黒字です。日本にとってアジア地域は、貿易相手地域として非常に大きな存在であることが分かります。

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