7月2日に発表された日銀の企業短期経済観測調査(短観、6月調査)では、大企業・製造業の景況感が5年半ぶりに2期連続で悪化した点が注目されました。要因はトランプ大統領の強硬姿勢がもたらした米国発の通商問題の影響や原油価格の上昇懸念などが挙げられています。
一方、私が着目したのは、「なぜ中小企業は、いつも大企業や中堅企業よりも数字が悪いのか」という点です。短観では景況感のみならず、雇用、需給ギャップ、売上高経常利益率など、様々な点で大きな差がついているのです。
今回は、短観を見ながら中小企業の現状を把握するとともに、中小企業が大企業と差がつく原因を考えます。

業況は、企業規模が小さいほど悪い
「短観」とは、日銀が四半期に1度、様々な業種の企業(約1万社)に対して景況感を問う調査です。業績のみならず、雇用人員は過剰か不足か、在庫や商品価格の状況はどうなっているかなど、色々な切り口から質問します。
新聞やニュースなどで取り上げられるのは、ほとんどが大企業の製造業と非製造業の業況判断だけですが、短観は実に様々な観点から企業に調査をしているのです。
短観では、「大企業」「中堅企業」「中小企業」というくくりを設けています。その定義は、大企業は資本金が10億円以上、中堅企業は1億円以上10億円未満、中小企業は2000万円以上1億円未満を調査しています。この点で、零細企業の多くは除外されていることにも注意が必要です。また、中堅企業といっても、最低ラインである「資本金1億円」というのは、それなりに大きな規模であることに注意してください。
以上を踏まえた上で、中小企業と大企業、中堅企業とを比較していきます。
この調査は、「良い(%)」と答えた企業の割合から「悪い(%)」と答えた割合を差し引いた「DI(Diffusion Index)」と呼ばれる方法を用います。つまり、全員が「良い」と答えれば、「+100」、全員が悪いと答えれば「-100」で、「0」が「良い」と「悪い」の境目です。
まずは「業況判断」です。6月調査の大企業の製造業は21、非製造業は24。中堅企業の製造業は20、非製造業は20。かなり良い水準です。そして、大企業と中堅企業とではそれほど差がありません。
ところが、中小企業の製造業は14、非製造業は8となっており、かなり大きく業況判断に差が開いています。数字自体は全体的に悪くはありませんが、規模が小さくなるほど、業況が悪いことが読み取れます。
日本企業のうち99.7%は中小企業であり、日本の全労働者のうち中小企業で働いている人は約70%だといわれています。企業数や労働者の大多数を占める中小企業が儲かりにくいということは、大きな問題の一つと言えます。
こういった中小企業の傾向は、「飛行機の後輪」に例えられることがあります。飛行機の後輪は、離陸するときは最後まで地面についていますが、着陸するときは最初に地面につきます。つまり、景気が良くなる時は最も遅く、景気が悪くなる時は最も早いということです。
さらに言えば、先に述べたように、日銀の調査対象の中小企業は「資本金2000万円以上1億円未満」の会社ですから、これよりもっと小さな企業ですと、状況はより悪い可能性があると考えられます。
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