改革が最も遅れているのは、教育です。近年、待機児童の問題が深刻化していますが、なぜ認可保育所を増やせないかといえば、規制が強いからです。さらには保育所を従来から運営する社会福祉法人は、新規の保育所開設に抵抗感を示しているということもあります。

 今、政府は、保育や幼児教育を無償化するために「こども保険」の創設や、公立高校の授業料を無償にする計画などを進めようとしています。これらと同時に、私は、加計学園の問題を突破口にして、いかに教育というか、教育業界の岩盤規制を打破していくかということを考えるべきだと思うのです。

日米の間に広がる「成長格差」

 私は今、母校である米ダートマス大学タック経営大学院のアジア地区のアドバイザリーボードのメンバーをしています。年に一度程度香港で行われる会議で、毎回必ず話題に上るのは、授業料と卒業から3年後の平均給与はいくらなのかということです。

 米国は教育費が高いことで有名ですが、同大学院の授業料も年間6万4000ドル(約700万円)ほどかかります。2年間通うと、生活費込みで2000万円は必要です。かなり高額です。しかし、卒業から3年後の学生(30歳くらい)の平均給与は18万5000ドル(約2000万円)になります。卒業できれば、すぐに元が取れると言えます。

 ここで2つの問題について考えなければなりません。1つは、教育格差によって所得格差が生じてしまう「貧困の連鎖」です。昨年の米大統領選挙で、ヒラリー・クリントン氏が公立大学の授業料軽減策を提案していましたが、背景にはこの問題がありました。

 もうひとつは、日米の「成長格差」です。2016年度の日本の名目GDPは、1990年台初頭とほぼ同水準である一方で、米国は90年代初頭に比べて約3倍に成長しています。名目GDPは給与の源泉ですが、日本の一人当たりの給与のピークは、なんと今から20年前の1997年です。

 先ほど大学院修了後3年で年収2000万円という米国の話をしました。日本で年収2000万円を稼ごうとするならば、超一流企業の部長クラスまで昇進して、ようやく届くかどうかというところでしょう。

 この年収、次のように考えられないでしょうか。少し乱暴な計算ですが、実際は3倍に成長した米国経済が、仮に横ばいだったとすると約670万円になります。30歳にしては高い水準ですが、それほど日本と大きな差はありません。

 つまり、日米の間には大きな「成長格差」がついてしまっているのです。ここが、日本にとっての大きな問題となっているのです。財政赤字の問題にしても、成長することで解決する問題は多くありますが、残念ながらなかなか成長しません。先進国のどこへ行っても物価が高いと感じるのも、日本が成長しないからです。

米国の高等教育のレベルが高い理由とは

 この問題を解決するためには、どうすればよいのでしょうか。様々な方策がありますが、やはり重要なものに規制緩和、そしてその大きな1つに「教育の規制改革」があると私は考えています。

 先にも触れたように、日本政府は教育の一部無償化を進めようとしていますが、それと同時に「教育の非効率性」にも目を向けなければなりません。

 例えば、一般的に日本の大学、とくに伝統ある私学などでは、教員の多くが自校の卒業生です。優秀な教員を外から採用すると、自分たちの立場が脅かされますから、外部採用に抵抗感を示す大学が少なくないからです。

 また、いったん採用されると、論文の数や研究成果とは関係なく、定年まで勤めることができます。学生からの評価が低くても、解雇されることはほとんどありません。学生による教員評価制度を実施している大学もありますが、最低評価でもクビにはならないのです。米国ではあり得ないことです。