学校法人「加計学園」(岡山市)を巡る問題が大きな注目を集めています。国家戦略特区の指定を受けた愛媛県今治市に獣医学部を新設する計画について、同学園の加計孝太郎理事長と親しい関係にあるとされる安倍晋三首相が便宜を図ったのではないか、という疑惑です。
「官邸トップのご意向だ」と文部科学省に対する圧力を示唆する文書が流出したとされ(政府は文書の信頼性を否定)、前川喜平・文部科学省前事務次官も記者会見で、文書の存在について「間違いない」と発言するなど、騒動が広がっています。
政府もその終息に必死ですが、もし事実であれば、許されないことであるのは言うまでもありません。しかし、私は、もっと本質的な議論が置き去りになっているような気がしてなりません。私たちは、今回の問題が映し出した日本の「岩盤規制」の問題にも目を向けるべきではないかと思うのです。

最も遅れているのは、「教育業界」の規制改革
日本政府は、50年以上にわたって獣医学部の新設を認めなかったといいます。加計学園も15回も獣医学部開設の認可申請をしてきましたが、ことごとく却下され続けてきました。私はもちろん、加計学園を応援する気は毛頭ありませんが、背景には、日本獣医師会による強い反対があったと言われています。空前のペットブームの到来で、獣医のニーズが高まっているにも関わらず、既得権益がこれだけ守られてきたことに、私は驚愕しました。
こうしたことは氷山の一角に過ぎません。例えば、安倍首相は「既得権益の岩盤を打ち破る」として、農業、医療、労働、教育の4分野を改革の対象として挙げています。
農業については、全国農業協同組合連合会(JA全農)の事業見直しといった農協改革を打ち出しました。形ばかりではありますが、これから環太平洋経済連携協定(TPP)交渉や日米の2国間通商交渉を進めていく中で、大きな風穴が開くのは時間の問題でしょう。それは「強い農業をつくる」という本来あるべき良い方向に転換していくのではないかと思います。
医療に関しては、改革待ったナシの状況です。医療費が年間41兆円、介護費が10兆円を超え、赤字が厳しい一般会計から医療や介護への特別会計に現状でも毎年10兆円以上もの補てんが必要な中、あと5年もすれば団塊世代の方々が後期高齢者になっていきます。その状況を見据え、緊急の対応を必要とする急性期病床を減らしながら、高齢化によって需要が増えるリハビリテーションや在宅医療を充実させようとしています。まだ道半ばではありますが、ある程度の方向性をもって着実に進んでいると言えるでしょう。
雇用に関しては、安倍首相を議長とした「働き方改革実現会議」を設置し、長時間労働の是正や在宅勤務の推進などの改革を進めてきました。まだまだ十分とは言えませんが、残業時間の上限を設け、違反した企業には罰則を科すという厳しいルールを定めたことは、一歩前進したと言えるでしょう。
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