次に、都道府県別の就業者数の増減を見てみましょう。2002年と2017年を比べて就業者数の増加が多いのは、1位が東京都の135万人増、2位が神奈川県の46万人増、3位は愛知県の25万人増となっています。
就業者数(千人) | 2017年人口 (千人) |
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2002年 | 2017年 | 増加数 | ||
東京都 | 6,330 | 7,682 | 1,352 | 13,515 |
神奈川県 | 4,387 | 4,851 | 464 | 9,126 |
愛知県 | 3,715 | 3,964 | 249 | 7,483 |
埼玉県 | 3,621 | 3,792 | 171 | 7,267 |
千葉県 | 3,103 | 3,251 | 148 | 6,223 |
大阪府 | 4,208 | 4,339 | 131 | 8,839 |
兵庫県 | 2,592 | 2,710 | 118 | 5,535 |
福岡県 | 2,383 | 2,501 | 118 | 5,102 |
沖縄県 | 573 | 691 | 118 | 1,434 |
京都府 | 1,271 | 1,313 | 42 | 2,610 |
このほか、大阪府、兵庫県、福岡県、沖縄県などが増加しています。つまり、主に増えているのが、表にある人口を見れば分かるように、沖縄を除いては大都市圏だということです。
逆に、就業者数が減少しているのは、1位が北海道の8.9万人減、2位が新潟県の8.5万人減、3位が長野県で7.7万人減となっています。北海道や新潟、長野などの比較的人口の多い県も人口減少ですが、よく見ると、人口の少ない県は、減少数は小さいものの、母数が小さいため比率的には大きな人口減少が進んでいると言えます。
就業者数(千人) | 2017年人口 (千人) |
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2002年 | 2017年 | 減少数 | ||
北海道 | 2,665 | 2,576 | -89 | 5,382 |
新潟県 | 1,250 | 1,165 | -85 | 2,304 |
長野県 | 1,187 | 1,110 | -77 | 2,099 |
秋田県 | 564 | 488 | -76 | 1,023 |
福島県 | 1,040 | 978 | -62 | 1,914 |
山形県 | 627 | 566 | -61 | 1,124 |
青森県 | 697 | 648 | -49 | 1,308 |
岩手県 | 703 | 655 | -48 | 1,280 |
山口県 | 728 | 684 | -44 | 1,405 |
長崎県 | 705 | 664 | -41 | 1,377 |
「道州制」で都道府県が競争する仕組みに
都道府県別の就業者数を見ると、人口の多い都市部ほど増加数が多く、人口の少ない地域ほど減少していることが分かりました。経済が比較的盛んで、仕事のあるところに、より人が集まり、逆に経済がそれほど活発でない地域からは人が減り、より経済が不活発になるということです。これは同一都道府県内でも同じ傾向がみられます。このままでは、人口がある程度増え続ける都市部とゴーストタウン化してしまう地域との二極化が進みかねません。
では、どのような手を打てばよいのでしょうか。私は、各都道府県の間での競争を促すべきだと考えています。例えば、米国であれば州によって税制や法律が大きく異なりますので、各州の特徴や姿勢が明確に現れていますね。雇用を増やそうと企業を呼び込みたい州は、独自の判断で大胆な優遇策を採ることも可能です。
それに対して、日本では、地方自治体が法律の範囲内で条例を制定することは可能ですが、内容にはほとんど差がありません。つまり、各地域は、アクセスの利便性や観光資源などといった地理的な差くらいしかないのです。
そこで各都道府県が、それぞれ税制や法律などの特徴を出せるようにして、自由競争をさせるようにすべきです。究極的には道州制にして地方分権を強化し、中央政府は米国のような、国防、外交、ナショナルミニマムの福祉政策を中心に行う政府にすることが、地方活性化において有効なのではないかと私は考えています。つまり、地方独自の「知恵」を出しやすくするのです。
その上で、政府としては「日本はどの産業を重点的に伸ばしていくべきか」を考えなければなりません。都道府県ごとの競争を促しながらも、日本全体では海外と競争していかなければならないからです。
すでに、優秀な人材が海外に流出したり、日本企業も生産拠点を海外に移したりといった産業空洞化の流れが進んでいます。それを阻止するためにも、どの産業に注力すべきか、「選択と集中」が必要です。
さらには、思い切って法人税を大幅に減税したり、大胆な規制緩和を行ったりといった「成長戦略」を打ち出すことが肝要です。
例えば、先ほどの業種別の就労者数の中で私が気になったのは、「農業、林業」です。2002年3月の242万人から、2018年3月は204万人まで、約15%減少しています。このままでは、近いうちに200万人を切るでしょう。
2017年の農業就業人口の平均年齢は66.7歳。このまま10年も経てば、日本の農業が衰退していくことは間違いありません。
政府は、「強い農家」をつくる政策を考えなければなりません。これまでの日本の政策は、「弱い農家をどう守るのか」ということに主眼がおかれ、毎年多額の補助金を支給してきましたが、そうではなく日本の農家が作る農産物を世界的に競争力あるものに生まれ変わらせる必要がある。安心安全な日本の農産物が世界でも通用するような輸出産業に育てていけるよう大幅なコスト改革をすべきではないかと思うのです。
日本の農産物そのものは、味もよく極めて高品質ですから、世界的に見ても競争力があります。ただ、やはり価格も高いですから、今後は効率化を図って価格を下げることが課題になるでしょう。そこで農地の集約化を進めるため、集約化のために土地を供出するなど協力してくれた農家には補助金ではなく年金を出すなどの政策も、一つの手ではないでしょうか。そして、その農地で働きたい限り働いてもらえばいいのです。
農産物が「売れる」ようになれば、日本を代表する輸出産品になる可能性も大いにあります。そうなれば、今まで以上に若い人たちが農業に参入してくれるでしょうし、農業人口も増えていく可能性がある。すると、さらに強い農業になるという好循環に入るのではないでしょうか。
政策全般に言えることですが、弱者を守ることは確かに正しいことです。しかし、産業的に弱いものを、弱いままに守ることが本当に日本経済にとって良いことなのかどうか。私は、もっと産業を強くする努力をすべきなのではないかと思います。
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