理由はいくつかあると言われています。一つは、消費者に「大塚家具は低価格路線に転換した」というイメージを与えてしまったこと。久美子氏は「自分たちの方向性を適切に伝えられなかった」と発言しています。

 二つめは、住宅会社との提携解消によって、家具のまとめ買いがなくなったこと。三つめは、マンツーマン形式の接客が廃止されたことで、大型店での新築客などによるまとめ買いが減少し、単品購入が増えたことです。

 今のところ、利益の蓄積にあたる「利益剰余金」は215億円あるので当面は問題がないものの、このままの業績が続くと、安全性の水準が低下していきます。

 久美子社長は次の戦略として、小型店と専門店の拡大、インテリアコーディネーターに相談できる有料サービスの開始、ネット販売の拡大などの項目を挙げています。

 ただし、先にも触れたように現預金は急減していますから、今後は銀行などからの借り入れや社債を発行しながら新たな投資をしていくのではないかと思います。これにより銀行や外部のアドバイスをこれまで以上に得られるようになるかもしれませんね。

「回転率の差」に表れた戦略ミス

 大塚家具の業績が悪化した主な理由は「戦略の失敗」です。数字的に見た場合、「商品の回転率」にその差が大きく表れています。

 貸借対照表の資産の部に計上されている「商品」を「商品売上原価」で割り、回転率を計算しますと、大塚家具は0.66年(8.0カ月)分、ニトリは0.20年(2.4カ月)分となります。

 ニトリの方が、商品の回転が大幅に速いことが分かりますね。回転が速ければその分売上げが上がり、資金負担がかからず、新しい商品がどんどん入って来ることでお客様からも喜ばれます。

 もう一つ、売上原価率(売上原価÷売上高)を計算しますと、大塚家具は46.6%、ニトリは45.8%。ほぼ同じです。ただし、回転率が大きく異なるため、ニトリの方が非常に効率的で、その差が圧倒的な利益の差となっているのです。

 余談ですが、2社の売上原価率はいずれも45%程度ということは、売上総利益率(1-売上原価率)は約55%と非常に高い水準です。多くの人は、「ニトリの家具販売は薄利多売だろう」というイメージを持たれているかもしれませんが、実は厚利多売なのです。ちなみに、ユニクロの売上原価率も50%程度。こちらも厚利多売のビジネスと言えます。

 売上原価率、商品回転率という2つの側面から見て、ニトリのビジネスモデルは素晴らしいと言えます。大塚家具はニトリよりかなり遅れをとっているものの、すぐさま危険な状況に陥るというわけではありません。

 久美子社長の新しい戦略が功を奏するのかどうかですが、私は、経営とは、「企業の方向づけ(戦略)」だけでなく、「資源の最適配分」、「人を動かす」の3つの要素が必要だと考えています。それらが総合されて経営力となるわけですが、今の大塚家具には、総合的な経営力という観点からも問題がありそうです。今後の業績に注目です。