3月20日、日銀の新体制が発足しました。黒田東彦総裁が続投し、若田部昌澄早大教授と雨宮正佳日銀理事が副総裁となりました。 黒田氏は依然として大規模な金融緩和の維持を主張していますが、欧米が緩和縮小に動き出す中、日本だけが異次元緩和を続けるというのは、大きなリスクを伴うのではないかと私は危惧しています。日本の異常さがクローズアップされかねません。
日本は2013年4月から「異次元緩和」を始め、2016年2月にはマイナス金利政策を導入しました。これは非常時の対策で、その時は仕方なかったかもしれませんが、ある意味「異常」な状態です。景気拡大が続く今こそ出口を探らなければ、金融市場の歪みはますます大きくなり、日銀や金融市場全体が背負うリスクは高まるばかりです。
日銀は、遅かれ早かれ出口を示さなければなりません。そのチャンスはまさに今ではないかと、私は考えています。

出口を示すチャンスは今だ
「線路は続くよどこまでも」という歌がありますが、今回の日銀の新体制が決まった時、私は「緩和は続くよどこまでも」と、つい口ずさんでしまいました。新副総裁の若田部氏は「金融政策に限界はない」と主張していますが、出口はどうするのか、具体的には語っていません。彼の発言を聞くと、どこか「撃ちてし止まむ」の言葉が想起させられます。
消費者物価指数 (生鮮除く総合前年比%) |
国内企業物価指数 (前年比%) |
輸入物価指数 (前年比%) |
|
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2014年度 | 2.8 | 2.8 | 0.2 |
2015年度 | 0.0 | ▲ 3.3 | ▲ 13.7 |
2016年度 | ▲ 0.3 | ▲ 2.3 | ▲ 10.5 |
2017年1月 | 0.1 | 0.5 | 4.3 |
2月 | 0.2 | 1.0 | 9.6 |
3月 | 0.2 | 1.4 | 12.1 |
4月 | 0.3 | 2.1 | 10.9 |
5月 | 0.4 | 2.1 | 12.4 |
6月 | 0.4 | 2.2 | 11.5 |
7月 | 0.5 | 2.5 | 11.9 |
8月 | 0.7 | 2.9 | 12.8 |
9月 | 0.7 | 3.0 | 13.8 |
10月 | 0.8 | 3.5 | 15.6 |
11月 | 0.9 | 3.5 | 10.4 |
12月 | 0.9 | 3.0 | 7.3 |
2018年1月 | 0.9 | 2.7 | 5.0 |
2月 | 1.0 | 2.5 | 4.4 |
出所:総務省、日銀 |
異次元緩和は、いつまで続けられるのでしょうか。2%の物価上昇を掲げる日銀がターゲットにしている「消費者物価指数(前年比)」を見ますと、1月はプラス0.9%、2月はプラス1.0%と上向きです。ところが「輸入物価指数」は、17年10月の前年比15.6%をピークに伸びの縮小が続き、18年2月は同4.4%となっています。
円高が進み、原油価格も落ち着きつつありますから、今後は輸入物価の伸びは縮小していくと考えられます。これは最終的に消費者物価に影響しますから、こちらも伸びが鈍化し始めると私は考えています。企業物価指数には、すでにその影響が出始めています。
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