「働き方改革」より「働きがい改革」を

 では、「下請けいじめ」が起こらない働き方改革を実現するためには、どうすればいいのでしょうか。

 私の答えは、「働き方改革」も大事ですが、それ以上に「働きがい改革」を進めるべきではないか、ということです。

 私は経営コンサルタントとして多くの企業を見てきましたが、その中で、ある中小企業が素晴らしい改革を実践していました。

 従業員150人ほどの規模で、そのうちの半分は現場仕事です。現場仕事が中心の会社は、一般に離職率が比較的高い傾向がありますが、この会社はほぼゼロである上、過去2年間で退職者が4人も戻ってきました。

 社員の愛社精神が強く、「会社に行くのが楽しみ」という声を多く耳にします。チームワークも良好で、高収益企業です。

 かつてこの企業は、離職率が比較的高く、決して社員たちが満足できるような労働環境ではありませんでした。社長は収益率の向上とともに、社風を改善すべく働きがいにフォーカスし、「行動改革」から着手しました。

 主な指針は三つ。一つは、お客さまが喜ぶことをすること。二つ目は、働く仲間が喜ぶことをすること。三つ目は、工夫を凝らすこと。たったそれだけです。

 トップがアナウンスするだけではなく、各社員に上の3つの指針について毎月、具体的な行動の目標を設定してもらいます。簡単なことでいいのです。作業後にまわりを掃除すること、電話が鳴ったら2コール以内に出ることなど、小さな行動を変えることで意識を変えていくことが狙いです。

 その目標を毎月各自と直属の上司が月末に評価して、社長と役員が全員分の評価シートにコメントをします。非常に手間がかかる作業ですが、それくらいの労力を費やさなければ、改革などできません。

 この積み重ねによって、社員の中で「働きがい」が生まれてきました。最も大きな働きがいが、人に喜んでもらうことだということが体感できたからです。

 人に喜んでもらうということは、生産性の向上につながります。パナソニック創業者の松下幸之助さんは、『道をひらく』の中で、それぞれの仕事に一生懸命力をつくすということを「金銭で換えられると思う人は、本当の仕事の喜びというものがわからない人である」と述べておられます。その「働く喜び」を本当に知った人が、生産性を高め、稼げる人になるのです。働く喜びには、もちろんお給料もありますが、お客さまや働く仲間に喜んでもらうということがとても大きな要素なのです。

金の切れ目が縁の切れ目のような会社になっていないか

 残念ながら多くの企業では、一番の目的が「利益」になってしまっているのではないでしょうか。そして、金銭だけが働く人の働きがいとなっているのではないでしょうか。すると、金の切れ目が縁の切れ目のような会社となり、殺伐とした会社になっていくのです。行き着く先は、「3日間で120億円の利益を出せ」というような無茶な指示を出すような会社となり、解体の憂き目を見るのです。働く人も結果的に不幸になるのです。

 もちろん、働きがいを求めるからといって、過重労働をさせてもいいという話ではありません。ただ、いくら働き方改革によって様々な制度を作っても、「働きがい」を感じない限り、生産性も社員の満足度も上がらないのです。働きがいを感じて働き、生産性が上がる社員が多くいる会社が、結果的に会社も社員も経済的に潤うのは明らかです。

 働き方改革が打ち出されてから、約1年。大企業は改革を進めています。しかし、働く人たちは本当に働きがいを感じているのでしょうか。そして、中小企業は、大企業からのコスト削減圧力の中、人手不足もあり、生産性の向上と長時間労働の是正をどのように実現したらいいのか、苦慮しているところが多いのではないでしょうか。私は、その答えの一つが「働きがい改革」だと考えています。