決算発表の取りやめを発表する東芝の綱川智社長(写真:長田洋平/アフロ)

 つまり16年3月期決算は、業績が急速に悪化し、経営危機の状況を示したわけです。こうした危機時には、できる限り現預金を増やすことが経営の大原則です。会社が危機に陥った時、短期的に本当に頼りになるのは「自社でコントロールできる資金=現預金」だけですからね。東芝のような大企業の場合、通常は月商分(年商÷12)くらいの現預金があれば十分ですが、その倍以上の額を融資や資産売却などで積み増したわけです。まさに危機モードです。

 また、資金の調達を短期借入金に依存したことが上記の決算書から読み取ることができます。銀行は「経営危機に陥っている東芝に長期で資金を貸すのは怖いから、短期にしておこう」と考えていたのでしょう。こういう状況ではできるだけリスクを小さくしようとしますから。これは、シャープが危機に陥っていた時と同じパターンです。

16年4~9月期は、回復の兆し

 一方、その後の16年4~9月期決算を見ると状況が一変していることが読み取れます。この時点までですが、業績が急回復したのです。

 売上高は前年同期より4.3%減の2兆5789億円でしたが、営業損益は891億円の赤字から967億円の黒字に転じました。最終利益も372億円から1153億円に回復しています。

 これは、スマホ向け半導体メモリーの需要が急増し、価格が高騰したことが大きく影響しました。中国のスマートフォンがメモリー容量を増やしたことが背景にあります。これは東芝にとって想定外の追い風でした。

 当初は人件費を削減したり、不採算事業を縮小したりすることで業績を回復させようとしていましたが、思いがけない特需によって一気に黒字化したのです。

 2016年4~9月期では、半導体以外の事業でも業績が急回復したことにも注目です。事業ごとの業績をまとめたセグメント情報を見ると、

 

 前年同期においては、ほとんどの事業が赤字でしたが、すべての部門において業績が回復していますね。ほとんどの事業が黒字化しています。

 こうした変化は貸借対照表にも表れました。負債の部にある短期借入金が、16年3月末の6196億円から3977億円に減りました。また、現金及び現金同等物も9697億円から5244億円に減っています。これは、月商の約1カ月分ですから、通常の状態の残高です。

 業績の回復を受けて、短期借入金を2000億円ほど返したことが分かります。この時点では、東芝の危機モードは確かに解除されつつあったのです。