そこで、中国の中央銀行にあたる中国人民銀行が、ドルを中心に外貨を買い支えしたのです。それが溜まりにたまって4兆ドルまで膨らみ、中国は世界1位の外貨準備を保有する国になりました。

 ところがその後、中国経済のトレンドが変わります。2008年9月に起こったリーマン・ショック直後、中国では4兆元(当時のレートで約56兆円)もの公共投資を実施。そのお陰で、当時は10%近い成長を実現しました。

出所:中国政府
出所:中国政府

 しかし、同時に副作用も生じたのです。鉄鋼やセメントなどの供給が過剰となり、人件費も上昇。経済成長は鈍化していきました。実質GDP成長率は12年には8%を割り込み、16年には6.7%にまで低下しました。これを受けて、今度は人民元が売られ始めたのです。

 人民元が安くなりすぎるのを防ぐため、中国政府は今度は外貨準備を売ることで人民元を買い支えました。これであっという間に外貨準備1兆ドルを使ってしまったわけです。

 急速に外貨準備が減少したことで、中国政府は「外貨の流出を抑えたい」と考えるようになりました。そして、人民元の防衛に動き出したのです。

 例えば、輸入関税の税率を引き上げました。16年4月から、高級時計の関税率を30%から60%に、酒・化粧品などの税率も50%から60%に引き上げたのです。

 また、16年1月から銀聯カードを使った海外での現金引き出し限度額を年間10万元(約160万円)に制限しました。日本での消費がますます減るのではないかとの見方が浮上しています。これ以外の為替に関する規制も強化傾向です。

 こうした経緯で、中国人観光客は日本で高額品を買わなくなりました。百貨店の方から聞いた話によると、やはり高級時計は売れなくなってしまったそうです。その一方で、売れているのはドラッグや化粧品、小型の魔法瓶。中国人はお茶をたくさん飲みますから、安価で高品質な携帯用の魔法瓶の需要が伸びているのです。リピートで日本に来る人も増え、足りなくなった日用品でなどを買っていく人たちも増えています。

 彼らの消費は、高額品から比較的安価な消耗品へ移っていると言えます。また「モノ消費」から、温泉やイベントなどを楽しむ「コト消費」へトレンドが変わっていることも指摘されています。このことは、観光地などにはプラスに働きますね。

IRをつくっても高収益は期待できない

 爆買いが終わったもう一つの理由は、人民元が安くなってしまったことです。2015年には1元=20円ほどの水準で推移していたのが、16年に入って元安が進み、同年夏には1元=15円程度まで下落しました。1月28日現在、1円=16円前後の水準です。日本で買い物をするメリットが小さくなってしまったわけです。