中国が春節を迎え、東京や大阪の街角では大きなスーツケースを引っ張った中国人観光客を多く見かけます。しかし、彼らの消費動向は以前と大きく変わり、日本企業にも影響が出ています。また、そこから中国経済の現状などが見えてきます。
先日、大阪で月に2回ほど出ているテレビ番組の担当者から、「小宮さん、百貨店の福袋は中国人観光客のおかげで昨年の1.5倍売れています。爆買いは続いているのですか?」という質問を受けました。私の答えは「比較的安いものは売れているが、高額品の爆買いは終わっている」というものでした。
昨年末あたりから円安に振れたこともあり、中国人観光客による消費が少し戻ってきてはいますが、それでも百貨店の数字を見ると、化粧品などの比較的安いものの売り上げは伸びているものの、宝飾品・時計などは前年比でマイナスとなっています。
2年ほど前、中国人観光客による爆買いが日本経済に大きな恩恵をもたらし、今後も続くと期待されましたが、残念ながら一時の波で終わってしまいました。特にホテル、百貨店、家電量販店などは、爆買いで業績が急回復したものの、既に潮目が変わってしまったように感じます。
日本を訪れる中国人観光客数自体は、2016年は前年比30%程度増えています。しかし、百貨店をはじめとする小売業の売り上げは減少が続きました。これは購入単価が下がっているからです。
なぜ、彼らは以前のような爆買いをしなくなったのでしょうか。今回は、春節を機に中国人観光客の動向の裏にある中国経済の状況と日本経済への影響について考えてみたいと思います。

闇民泊が横行し、ホテルの宿泊料金が落ち着いた
2年前の2015年、ホテルの宿泊料金が異常に高くなっていた時期がありました。私がいつも利用している、通常なら1万円台で泊まれる大阪のホテルでは、スイートルームでもないのに「1泊6万円」と言われて驚愕したことがありました。他のホテルの料金も、1泊3万円などザラでした。ちなみに、先ほどのホテルは今年1月には1泊1万円台に落ち着いています。
なぜその時期ホテルの宿泊料金が高騰したのでしょう。答えは中国人観光客の需要が急増したからです。観光局の集計によると、2015年の「訪日外客数」は前年比47.1%増の1974万人。外国人観光客の数が大幅に増えた年でした。そのうち中国人は同107.3%増の499万人と、群を抜いて増えていたのです。
ところが、昨年あたりから、ホテルの宿泊料金はほぼ落ち着いています。日本経済新聞社がまとめた東京都内の主要18ホテルの稼働率を見ると、16年2月以降も高水準が続いているものの前年の実績を下回っています。2016年の訪日外客数は前年比21.8%増(うち中国人は同27.6%増)で、宿泊料金が高騰した15年よりはるかに増えているにもかかわらず、です。
ホテルの宿泊料金が落ち着いた理由は3つあります。一つはホテルが増設されたこと。二つめは、数千人規模が乗船できる大型クルーズ船での訪日が人気があること。特に中国から九州の港にやって来るケースが多く見られます。三つめは、旅館業の認可を受けていない「闇民泊」が増えていることです。こちらも、中国人の利用者が多いと言われています。
一部の報道によると、闇民泊の宿泊料金はだいたい1室1万円。ただし、同じ部屋に5人ほど宿泊できますから、1人当たり2000円ですみます。
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