石油元売り業が苦戦する4つの理由

 なぜ、苦境が続いているのでしょうか。理由の一つは自動車の燃費が向上し、ガソリンの需要が年間2~3%ずつ減っていることです。将来的にはハイブリッド車や電気自動車が今まで以上に普及し、需要はますます減少していくでしょう。

 二つ目は、給油所の減少です。ガソリン需要が減っていることに加えて、11年に消防法が改正されたことが大きく影響しています。設置から40年以上経過した燃料貯蔵タンクの改修が義務づけられました。

 地下に設置された大型タンクの改修には1基につき100万円以上かかります。複数のタンクを保有するガソリンスタンドは総額1000万円以上のコストが生じます。給油所には小規模な事業者が少なくないため、経営を断念するケースが少なくありません。

 三つ目は、原油価格の下落です。ドバイ原油の価格は、14年8月までは1バレル=100ドル前後で推移していましたが、その後急落し、15年1月には46ドル、16年1月には27ドル台まで下落しました。長い間、下落傾向が続いたわけです。OPECの減産合意などがあって、現時点(1月19日時点)では1バレル=53ドル前後まで戻しました。

 冒頭でも触れましたが、石油元売りは、災害が起こった場合に備えて70日分の石油を備蓄するよう義務づけられています。JXは16年3月期の下期に1バレル=50ドルと想定していたものの、実際には30ドル台まで下落。その結果、備蓄分の評価額を引き下げる必要が生じ、16年3月期に2650億円の損失を計上しました。

 四つ目として、円安ドル高の影響があるでしょう。14年6月までは1ドル=100円前後で推移していましたが、その後円安が進み、14年12月には1ドル=120円台をつけました。16年に入ってから円高に振れましたが、業績が悪化していた時期は円安になっていたのです。

 円安に触れている時期は、石油の仕入れ値が円ベースでは上がってしまいます。それを売値に十分に転嫁できなければ、収益は下がってしまうのです。

 2017年3月期(今期)に入ってからJXの業績は回復に転じました。16年4~9月期の売上高は前年同期より19.4%減の3兆6697億円となったものの、肝心の営業利益は474億円の黒字に回復しています(前年同期は454億円の赤字)。これは、円高に振れて石油の輸入価格が円ベースで下がったことが要因の一つとしてあるでしょう。

 ただし全体的に見ると、利益体質は脆弱だと言わざるを得ません。今のところ、原油価格が1バレル=50ドル台で安定していますが、厳しい状況が続くのではないかと思います。先にも触れたように中長期的にはガソリン需要が減っていきます。

 自己資本比率から見れば安全域にありますから、今のところすぐには経営危機に陥ることはありません。しかし、市況が安定的に回復し、利益をきちんと取れるようにならなければ、苦しさが増すことは十分に想像できます。

 もう一つ、注意したい点は、この業種は設備投資のためにある程度のキャッシュが必要だということです。

 それは、キャッシュ・フロー計算書から分かります。16年3月期のJXの投資活動によるキャッシュ・フローにある「有形固定資産の取得による支出」が、マイナス2246億円計上されています。これは主に設備投資の額です。マイナスになっているのは、これだけ支出しているということ。これに対し、「減価償却費」は2276億円です。