NAFTA廃止は、日本の自動車にも大ダメージ

 2017年には、フランスで大統領選、ドイツで総選挙が行われます。春に予定されるフランスの大統領選挙では、極右政党・国民戦線のマリーヌ・ル・ペン党首が有力候補となっており、決選投票にまで進むだろうと予想されています。決選投票では、敗れるとの予想が大勢です。ですが、それでも勢いで勝たないとも限りません。予想が当たらないのが当たり前の昨今です。

 9月のドイツ連邦議会選挙では、メルケル首相の率いる「キリスト教民主同盟(CDU)」が苦戦し、難民支援の削減を訴える「ドイツのための選択肢(AfD)」が躍進する可能性があると報じられています。メルケル首相はEU統合の中心的存在です。彼女が首相の座を維持できなければ、EUからの離脱を進める加盟国が増加する恐れが生じます。ドイツの総選挙は、EUにとって一つの大きな転換点となる可能性があります。

 注意すべきは欧州だけではありません。先ほどから何度も触れているように、米国も2017年後半には日本経済を揺るがす存在になる可能性があります。

 私が最も恐れているのは、トランプ氏が北米自由貿易協定(NAFTA)を見直すことです。彼は元々、NAFTAに否定的で「最悪の協定だ」とまで発言してきました。

 メキシコは、自動車生産の中核的な場所となっています。米国の自動車産業のみならず、日本の自動車産業もメキシコに工場をたくさん置いています。もしもNAFTAが廃止になれば、日本の自動車業界にとって大きな打撃になりかねません。

 問題はほかにもあります。ドル高傾向がこのところ強まっています。トランプ氏はドル高に対して以前から懸念を示しています。欧州情勢が不安定になると、ユーロに対してもドル高がさらに進む可能性が高くなります。

 一番の槍玉に上げられるのは中国ですが、日本にも同様の可能性があります。米国の年間の貿易赤字額は、ここ数年は7千数百億ドルで、その最大は中国です。ただし、対日本でも貿易赤字額の1割弱に相当する700億ドル程度の赤字を計上しています。したがって、中国のみならず日本にも「通貨安を何とかしろ」とプレッシャーをかけてくる可能性があります。

 中国に対しては輸入制限や関税率を一時的に高めるなどの措置を発動する可能性も否定できません。議会の承認を得なくても、大統領令などで対応が可能なことが多いからです。通商代表部の代表(USTR)に、対中強硬派で知られるロバート・ライトハイザー氏を指名したことも対中政策が厳しくなる可能性を示唆しています。

 中国は、一時期4兆ドルあった外貨準備が3兆ドルぎりぎりのところまで減少しており、人民元の防衛に必死です。それでも元の下落トレンドはなかなか打ち消せません。人民元がさらに下落することがあれば、トランプ政権が厳しいプレッシャーをかける可能性もあります。

 米国経済が好調であればそんな圧力はかけてこないでしょう。しかし、米国経済が予定通りに拡大しない、さらには、欧州で波乱があり世界各国が内向きになれば、米国も保護主義的な強硬手段に出てくることがあるかもしれません。トランプ氏は、自身の支持基盤であるプアホワイトの雇用をとにかく守りたいわけですから。支持率をにらみながら、対策を講じていくと思われます。

 まとめますと、2017年前半の日本経済は、米国経済の拡大に支えられ比較的好調に推移すると思います。一方、年後半は国際情勢とトランプ氏の政策によって大きく動く可能性があるわけです。大きな波乱含みであることはこれまでと変わりありません。