波乱含みの年後半

 問題は2017年後半です。米国の大統領と議会の「ハネムーン期間」が終わっても米景気が順調に拡大していれば問題は小さくてすむでしょう。しかし、皆が期待しているほどに景気が拡大しなければ、繁栄から取り残された人たちが思ったほどの恩恵を感じないことになりかねません。減税は大企業や富裕層に偏ってメリットが出やすいものです。

 また、インフラ投資にも課題があります。民間主導のPFI方式で行い、それを行う企業に減税するという方法が考えられています。この場合には、どれだけの企業が実際に参加するかは不明です。

 いずれにしても、景気拡大がうまくいかない場合、トランプ大統領は保護主義的傾向を強めざるを得なくなるでしょう。NAFTAを見直すことで、メキシコからの輸入に対する関税を強化したり、貿易赤字が大きい中国に対して厳しい経済政策を課す可能性があります。

 ただし、対中政策を保護主義的にすると、中国での米企業の活動を大きく阻害するとの見方もあります。トランプ新政権の動きが注目されるところです。中国経済の動向は、もちろん日本経済にも大きな影響を与える可能性があります。このことは、後にもう少し詳しく説明します。

 さらに、欧州において不確定要素がいくつも存在します。最悪の場合、EUが瓦解する方向に動き、大波乱が起こる可能性があります。

 最初の注目点はイタリアです。2016年12月、改憲の是非を問う国民投票が行われ、反対派が過半数を占める結果となりました。これによって、改憲を推し進めていたマッテオ・レンツィ首相が引責辞任に追い込まれました。

 イタリアの総選挙がいつ実施されるか分かりません。しかし、イタリア国内では早期の総選挙を求める声が強まっており、早ければ今年前半にも実施される可能性もあると報じられています 。

 もしこの総選挙で、EU離脱を目指す ポピュリズム政党「五つ星運動」が躍進し、EU離脱の可能性が高まった場合、私はイタリア国内で金融危機が起こるのではないかと危惧しています。国民投票が実施された当時の世論調査を見ると、政党別支持率で与党・民主党が首位となっているものの、「五つ星運動」が僅差で2位に着けていました 。

 今、イタリア3位の銀行、モンテ・ディ・パスキ・ディ・シエナの不良債権問題が取り沙汰されています。レンツィ首相が国民投票に敗れたため、同行は周辺国を中心とした金融機関などから増資を受けることが難しくなりました。イタリア政府が公的資金を入れることで、何とか現状は小康状態を保っている状態です。イタリア政府は、モンテ・ディ・パスキをはじめとする銀行の不良債権を処理するために200億ユーロを用意すると表明しています。しかし、それで足りるかどうかは分かりません。

 イタリアの銀行全体では、GDPの20%(約3600億ユーロ)に上る不良債権を抱えていると報じられています。GDPの20%といえば、日本で90年代にバブルが崩壊し、処理を強いられた不良債権の比率とほぼ同じ規模です。その際には、1997年、2003年と二度の金融危機に見舞われ、中小銀行のみならず大手行までいくつも破たんしました。あの時と同じ規模の衝撃を、イタリアが受ける恐れがあるわけです。

 総選挙が実施され、五つ星運動が躍進したとしても、そう簡単には、イタリアがEUから離脱するとは考えらえません。あのギリシャでさえ離脱しなかったのですから。そう考えるわけですが、EU離脱やトランプ大統領誕生を考えれば、何が起きても不思議ではありません。もし、イタリアがEUを離脱するようなことになれば、イタリアの金融界およびイタリア経済は大混乱に陥ることが避けられません。イタリア経済は英国と違い足腰が弱いですから。イタリアのみならず周辺国にも間違いなく多大なダメージが及ぶことになります。