コストアップインフレでもデフレよりまし

 二つ目の要因は、原油価格の下落です。原油価格は2014年夏に急落し、1バレル=100ドル前後から2016年2月には33ドル台まで落ち込みました。

 そして、こちらにも転機が訪れました。2016年12月、石油輸出国機構(OPEC)と非加盟産油国がウィーンで会合を開き、原油の減産に合意しました 。これを契機に、中東産ドバイ原油の価格は1バレル=50ドルを少し上回る水準で安定し始めました(ただし、これらの産油国は米国におけるシェールオイルの産出動向をにらんでいます。シェールオイルの増産は原油価格の上値を抑えますから、1バレル=60ドルを大きく超えることは考えにくいでしょう)。

 円高と原油価格の下落という輸入物価を落ち込ませる二つの大きな理由が解消する方向にあることから、輸入物価は昨年の水準より上がる可能性が高いのです。早ければ年初から、前年比のマイナス幅が縮小して、プラスに転じるかもしれません。

 そうなれば、国内の消費者物価も上昇することになるでしょう。先にも触れたように、夏前には前年比プラスに転じる可能性があります。

 ただし、この傾向は「良いインフレ」とは言えません。需要が拡大し景気を引っ張るディマンドプル型のインフレではなく、輸入物価の上昇によるコストプッシュ型のインフレだからです。価格上昇分は海外に出ていくということです。ただし、現状のデフレ傾向が続き、デフレスパイラルに陥るよりははるかにましだと考えます(ちなみに、今後の一つの焦点は、伸びが鈍い「現金給与総額」が上昇に転じるかどうかです)。

 特に、日銀にとって輸入物価の上昇は「神風」です 。2013年4月以降の「異次元緩和」で、日銀が国債の3分の1を保有するほどの量的緩和を続けてきました。その効果が薄まると、マイナス金利政策まで導入。それでも物価は下落し、銀行から企業への貸し出しも増えず、結局、景気浮揚効果は現れませんでした。それどころか、マイナス金利のせいで民間金融機関の収益が大きく悪化する副作用の方が大きくなってきてしまったのです。

 そこで日銀は、民間金融機関に配慮して、マイナスだった長期金利を0%程度に引き上げる誘導目標を立てました。しかし実現は難しく、もはや手詰まりといった状況に陥っています 。そんな時に、トランプ氏の勝利とOPECの減産という二つの要素によって円安・原油高に振れ、日本の金利が上がり始めた。さらには今後、物価も上昇する可能性が高い。これはまさに日銀にとって願ったり叶ったりの状況なのではないでしょうか。

 また日本のグローバル企業も、中期的には問題が生じる可能性をはらんでいるものの、短期的には円安メリットを享受しています。現状のドル-円レートの水準は、今期の想定レート(105~110円程度)を上回る水準にありますから。中期的な問題とは、NAFTA(北米自由貿易協定)見直しの可能性などを指します。トヨタのメキシコ工場についてのトランプ次期大統領のツイッター発言が注目されていますね。

 以上の点から、2017年前半の日本景気は比較的明るいと私は考えています。