あけましておめでとうございます。経営コンサルタントの小宮一慶です。本コラムでは、経済ニュースでよく取り上げられるGDPや消費者物価指数、鉱工業指数といった「景気指標」をベースに、日本経済と世界経済を分析していきます。
私は職業柄、日本経済新聞が月曜日に掲載する景気指標欄を何十年もチェックし続けています。数字の羅列にしか見えないかもしれませんが、景気指標の定義を知り継続的に観察することで、日本や世界の経済が具体的にどのように動いているのか、手に取るように見えてくるのです。
今回は、重要な景気指標を見つつ、2017年の日本経済と世界経済を展望します。

結論から申しますと、2017年の日本経済は、前半は好調に推移すると考えています。後半は波乱含みの可能性があります。その大きな原因はドナルド・トランプ次期米大統領の政策にあります。皆さんもご存じのように、1月20日に同氏が米大統領に就任します。
2016年に行われた米大統領選挙は、米国を分断する選挙だったと言えるでしょう。トランプ氏とクリントン氏が本選で獲得した州を地図上で見ると、中央はほぼすべてトランプ支持を示す赤色、西海岸と東海岸周辺はクリントン支持を示す青色に染まりました。つまり、繁栄を享受する人と、それから取り残され、大きな不満を持っている人に分かれたと言えます。
トランプ氏を支持する層は、「プアホワイト」と呼ばれる白人の低所得者層が多くを占めているのが特徴的です。このため、鉄鋼や自動車などの産業が衰退したかつての工業地帯「ラストベルト(さびついた工業地帯)」が、赤色に染まったわけです。また、大学を出ていない白人の75%がトランプ氏を支持したとも言われています。学歴差が所得差を生み、それがさらに貧困の連鎖へとつながるのが現在の米国です。
経済成長こそ分断を解消する
では、この分断を融和する最も効果的な方法は何でしょうか。それは、経済を成長させることです。トランプ氏も同じように考えているようで、大幅な減税とインフラへの投資を表明しています。これらが実現すれば、米国景気は高い確率で浮揚するでしょう。
ただ、減税とインフラ投資は米国の財政赤字を増大させる可能性があります。結局のところ税収が減って支出が増えるわけですから。米経済はこれからインフレ傾向を強めながら、金利が上昇する局面に向かうと考えられます。
財政赤字の拡大は、議会の反発を招く可能性もあります。けれども、これまでの通例では、大統領就任当初の100日間は新大統領との「ハネムーン期間」となり、その間は、共和党主導の議会も大きな反発はしないと考えられます。景気が順調に拡大することは、議会にとっても望ましいことであるわけです。
これは、利上げを目指す米連邦準備理事会(FRB)にとっても都合のいい話です。FRBは2017年の利上げを「年3回」と想定しています。2015年9月時点の「年2回」よりペースが速まりました。
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