エーゲ海に浮かぶイカリア島では、ナショナル・ジオグラフィックによれば、米国人の6倍もの豆を食べ、4分の1の砂糖しかとっていない。90歳代の人の割合が地球上で最も高い(3人に1人が90歳代まで生きる)一方で、老年性認知症の割合が最も少ないことで知られている。
米カリフォルニア州のロマリンダはセブンスデー・アドベンチスト教会(キリスト教の一会派)が中心になってつくった街。この地域の平均寿命は、アメリカ全体よりも10歳も上回っている。たばこやアルコールを避け、菜食主義を徹底しているのに加え、週一日の「安息日」厳守の習慣もメンタルヘルスの面からプラスに働いているようだ。
そしてコスタリカのニコヤ半島では、カボチャとトウモロコシなど野菜を多く摂る低カロリーの食事が人々の長寿につながっているとみられる。数多くの100歳以上の人々が暮らす、世界第2位の規模のコミュニティーが存在する。
長生きするための「9つの要因」
それでは、この長寿の秘密はいったいどこにあるのだろうか。ブルーゾーンにはどんな謎が隠されているのだろう。
米国の研究者、ダン・ベットナーをリーダーとする専門家グループ(医者、人類学者、人口学者、栄養学者、疫学者たち)はこれらブルーゾーンを訪れ、長寿の9つの要因を突き止めた(以下の囲み)。これらは食生活、生活習慣に大いにかかわっている。
① 日常生活でよく体を動かしている、そしてそれが規則的なこと。 長寿地域に住む人々は、座る時間が多い生活様式とは無縁である。
② 生き甲斐があること。毎朝起きるための目的があるということ。
③ ストレスが少ない。ストレスは老化とかかわるすべての病気と密接な関係にある。ブルーゾーンでは、生活のリズムの中にストレスを減らすための活動が組み込まれている。例えば地中海沿岸におけるシエスタ(昼寝)の習慣、セブンスデー・アドベンチスト派の人々の祈りの時間、沖縄の女性たちのお茶の時間など──である。
④ 2500年前の中国・孔子の教えに「腹八分目」という食事に対する提言がある。これは満腹を感じるまで食べるのでなくその80%までにしなさい、という意味だ。満腹感は30分ほどかかって脳に届く。腹八分目にすることで過食を防げる。
⑤ 野菜中心の食事を心がけること。肉や魚、乳製品は食べてもいいが少量に抑えること。
⑥ 適量のお酒をたしなむ程度に飲む人は、飲まない人よりも長生きするという俗説は正しい(最近、この考えに反対する意見もあるが、ブルーゾーンの高齢者には赤ワインなどを適量飲む人が多い)。
⑦ 健康的な習慣を促進するような社会的グループに参加する。
⑧ 宗教グループの活動に参加する。孤独は死につながりやすい。お互いに助け合うコミュニティで暮らすことは大切だ。
⑨ 父親、母親、兄弟姉妹、祖父母等、家族間の絆が深いこと。
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