フェイスブックに映る世界は「歪んでいる」

 被験者におびただしい量の情報を与えたあと、様々なタイプの決断を下してもらう、という実験がある。情報過多の状況では、心理的にベストの判断は不可能という実験結果が出ている。また脳科学という見地からも情報のオーバードーズ(過剰“服用”)の状態では認知能力に制限がかかる、と言われている。

 社会的そして心理学的側面からも「インフォ・インフレーション(情報のインフレ)」は巨大な現象となって我々を飲み込みつつある。

 私たちの誰もが、現実の世界では多かれ少なかれ人生の困難(現実の厳しさ)に直面している。にもかかわらず、例えばフェイスブックのタイムラインは、それとはかけ離れた、優雅で素晴らしい生活に限定された世界を映し出している。そしてリンクトインを見れば、誰もが素晴らしい仕事をしているような錯覚に陥ってしまう。インスタグラムを見れば、自分以外の誰もが充実した生活をしているような気持になる。

 私たちの周囲には大量の情報が浮遊している。にもかかわらず、本当に知らなければならないことは何も知ることができていない──という不安感をかき立てられる。

取るに足らない情報の洪水が、社会を混乱させる

 この焦燥感に「フェイクニュース(事実ではない内容の情報・報道)」が追い打ちをかける。我々が日々消費する情報は何の役にも立たない、挙句にウソである可能性もある。しかしながら、これらの取るに足りない情報の洪水は、社会を混乱させるパワーに満ちている。

 情報中毒は教育の分野にも影響を与えている。近年の学生は目に見える結果をすぐに求める傾向がある。私のMBA(経営学修士)のクラスでは細切れになった小さなサイズの分かりやすい情報に学生が飛びつきがちで、じっくり大きく複雑な構想を練るというプロセスは時代遅れとなった感がある。さらには、そのクラスでその日に何かを得られたかどうかで、学生はそれが良いクラスか否かを決めつける。その結果として教師は学生の注意をそらさないテクニックやメソッドを駆使する、芸術家や俳優のようになってきている。