優秀な社員を引き留めるには、どういう方法があるか

 何週間か前、私が勤務するビジネススクールの経済セクションの同僚が、私の研究について質問してきた。「ビジネスパーソンの勤務先企業への貢献度と満足度」をどのように測定するかというテーマについてである。

 私の意見は簡単に言えば、次のようなものである。

 「もし満足していなければその人はその会社を去るだろうし、もし会社に残っているのならそれは会社のために働きたいと考えているからで、その度合を緻密に測定しても仕方ない──」。

 私のこのエコノミスト的発想は「企業の大切なリソースとしての人材」という概念を捉えるには、確かに単純過ぎるように思う。もちろん社員が今の会社をやめないのは他の選択肢より勝るものがあるからだが、実情がもっと複雑なことは承知している。

 優秀な社員を会社に引き止める──。近年の人材管理において、この課題に関して様々な研究が行われてきた。だから私の同僚のような質問をしてくる人が多いのはもっともである。

 にもかかわらず、近年の世界不況によって労働市場が危機的状況に陥り、「引き止める必要」そのものが薄れているのは、皮肉としかいいようがない。