いち早く日本型経営を称賛したピーター・ドラッカー

 欧米の専門家の中でいち早く日本型経営を称賛したのはピーター・ドラッカーだった。ドラッカーは「現代経営学」や「マネジメント哲学」の父と言われており、日本企業の経営者やマネジャーたちの企業への帰属意識とともに、戦略的な方向性にひきつけられた。

 私は日本企業とビジネスの経験のあるCEOたちと数々の会話の機会を持ったが、日本型経営について私が印象深く思っているのは、例えば以下のような点である。

■【長期志向・長期的視点】
 短期的視野で利益を出していく必要のある「欧米型マネジメント」とは真逆であった。日本のマネジャーたちは、大きな戦略目標達成には5年、あるいはそれ以上の時間がかかることをよく知っていた。この粘り強さと長期的視野は、新しい商品や事業を育てる上で必要不可欠なものだ。そして、このベースにあるのは高い職業倫理である。日本企業の従業員の労働時間は長く、しかもほとんどの従業員がタフに働いていた。

■【グループへの帰属意識の高さ】
 グループや系列への帰属意識が強く、従業員は経営者や取引先と強い協力関係を築いて仕事に一途に打ち込む。これも個人主義を重んじる欧米の企業文化とは正反対だった。個人よりも組織や集団を優先する日本企業では、プロジェクトの継続性が、個人が主導するケースよりも確実なものとなる。これはグループへの強い帰属意識とともに、各人の強い責任感によって支えられている。

■【現地管理職への権限移譲】
 日系企業は、欧米やアジアなど海外に進出した際に現地管理職に一定の大きな権限を与えている。一方、欧米企業(外資系企業)の経営者たちは日本企業とは反対に、現地企業の戦略決定に深く関与し、強くコントロールしようとする。

■【個人的な信頼関係の重視】
 中国企業などアジア企業に共通する点かもしれないが、良好なビジネスの関係を構築し、最適な決定を下してゆくために、個人的な信頼関係を大切にする。日本企業の強みの一つは、信頼を基礎に支えあう「共同体的な組織風土」であった。何人かの経営者が私に語ってくれたのだが、この個人的な信頼関係を構築するまでには時間がかかるが、いったん揺るぎないものになると、様々な決定において迅速な対応が可能になったという。

■【最重要の決定は上層部で】
 「現地スタッフへの権限移譲」と相反するように感じるかもしれないが、最も重要な決定の判断は必ず上部に預ける。各国・地域のヒエラルキーのあり方を分析する「権力からの距離」に関しての研究があるのだが、その研究の結論を言えば日本は権力と下部との距離が他のどの国よりも離れている。意外に感じるかもしれないが。

■【同じランクの社員とコンタクトする】
 これは細かいことだが、他企業とのやり取りにおいては同じランク(階層・階級)の社員とコンタクトすることが大切だ。欧米のマネジャーはこの“しきたり”を念頭においておくと、他企業の日本人管理職とコンタクトする場合に役立つ。他企業とのコンタクトで異なるランクの社員を避けること。そうすれば信頼を得やすく、ビジネスにおける合意への近道となる。