日本型経営が華やかなりし頃

 ずいぶんと昔の話になるが、私がMBAを取得するために勉強をしていた頃、日本企業のマネジメントは、憧れの的であり、研究すべき対象であり、そして欧米企業が取り入れるべき仕組みだった。

 当時、斬新なビジネスの手法や、マネジメントコンセプトは日本からやって来て、世界中で取り入れられた。欧米やアジアでも著名なソニー創業者の盛田昭夫氏、本田技研(ホンダ)創業者の本田宗一郎氏など、優秀な企業リーダーを生み出したのも日本である。

ソニーの創業者のひとり、盛田昭夫氏(1921年~1999年)。(写真:David Lomax/Camera Press/アフロ)

 近年、日本型経営が話題に上ることがめっきり少なくなってしまったのは残念だ。欧米やアジアの企業が日本企業に学ぶことはまだたくさんあると私は思っている。経営やマネジメントなどの手法や企業風土を、振り返ってみよう。

 1990年代初頭、トヨタは「グローバル戦略」の中で欧米の主要自動車メーカーと競合していくために生産方式の改革を行っていった。同時にマネジメントや生産管理などについて新しい方法も生み出された。たくさんの手法が生み出され、社外にも伝えられたが、私にとって印象深い一つを挙げれば、それはトヨタの「5つのなぜ」だ(「なぜなぜ分析」ともいわれる)。持続的な改善のプロセスのなかで、繰り返し「なぜ」を問う(例えば、その問題が起きた本質的な原因を「なぜ」を繰り返すことで突き詰めていく)。そして問題発生の本質的原因を見つけることで、最善の解決案を導き出す手法である。生産現場のカイゼンだけでなく、営業や経理といった部門でも業務改善のために幅広く活用されている。

経営者、従業員、取引先企業が一丸となり業績向上に取り組む

 また、松下電器グループ(現パナソニックグループ)は、コストダウンによって欧米のライバル企業と競合したグローバル企業の先駆けである。当初は製品をコストよりも安く発売し、マーケット内でのシェアを上げて、コストダウンを可能にする。その積み重ねで業界のリーダーとなって、製品発売当初の損失や投資は後から回復する。マーケットを支配すればするほど、競合企業の存在は相対的に弱まるので、少々なら価格を上げることも可能となってくる。

 日本型経営の長所は、経営者、従業員、取引先企業が一丸となって業績向上に取り組むことだ。例えば、日本の「大企業」の特徴を表す言葉として「系列」がある。これは多岐にわたる業種の企業が複合して、巨大企業グループを形成するものだ。強力な中央集権のもと、グループ内部の銀行など金融会社と連携して、経営戦略やファイナンス計画も練る。

 日本企業は、日本型経営や、グループ・系列の結束を活用して、多岐にわたる業種で世界のリーダー的存在へとのぼりつめた。