110歳超のスーパーセンテナリアンってどんな人
世界で300~450人、最長寿記録は122年と164日
日本の100歳以上の高齢者、6万5000人以上
生物の寿命とはその生物が生存可能な最長年数のことである。人間の場合、先進国での平均は70歳代~80歳くらいだろうが、確実な証拠がある中の最長寿記録(本稿執筆時点)は、フランス人女性、ジャンヌ・カルマン(1875~1997)さんの122年と164日である。
カルマンさんの記録には到達しないものの、世界では100歳以上の長寿者(センテナリアン、1世紀以上を生き抜いたという意味)が増え続けている。その中には110歳以上の「スーパーセンテナリアン」もいる。いったい彼ら・彼女らはどんな人たちなのかを見ていこう。
122年と164日という世界最長寿記録を持つフランスのジャンヌ・カルマンさん。120歳の頃。1995年10月17日撮影。(写真:AP/アフロ)
近年、センテナリアンやスーパーセンテナリアンが増えていることは何となく感じてはいるが、その正確な数については知らない方が多いかもしれない。100歳以上の高齢者は、日本に6万5000人以上いる(2016年の厚生労働省の調査)が、50年前の日本には約200人しかいなかった。
世界には約120万人のセンテナリアンがいると推定されている。つまり、世界レベルで言うと、単純計算で人口1万人に1.62人のセンテナリアンがいる計算だ。なお、人口1万につき何人のセンテナリアンがいるかを国別比較すると、ギリシア(5.64人)、日本(4.96人)、イタリア(3.04人)となっている。
沖縄は「世界5大ブルーゾーン」のうちの1つ
さらに地域について言えば、サルディーニャ島(イタリア)、イカリア島(ギリシャ)、沖縄(日本)が、世界5大ブルーゾーン(健康で長生きする人が数多く集まる地域)の中の3つを占める。これらの地域には、90歳、100歳以上の長寿者が集中している。
米国の調査機関「ジェロントロジー・リサーチ・グループ」によると、現在、全世界で300~450人いる、110歳以上のスーパーセンテナリアンのうち、公式文書でそれが証明できるのはその約10%だという。それはさておき長寿化は確実に進んでおり、住民登録や戸籍管理の質も向上していることから、“証明書付きセンテナリアン”はどんどん増えている。
代表的スーパーセンテナリアンは、東洋人女性
さてここで、110歳以上のスーパーセンテナリアンに焦点をあててみよう。どんな人たちなのか? どういった特徴があるのか? 110歳以上のスーパーセンテナリアンの人数(300~450人)は、100歳以上のセンテナリアンの人数(約120万人)と比べると、恐ろしいほど格段に人数が少なくなる。
現時点で、確かな資料で証明ずみのスーパーセンテナリアン43人を抽出すると、その中の42人は女性である。長寿化の推進者は女性であり、「年齢ピラミッド」を上がっていくにつれ女性の割合が圧倒的に高くなる。これら43人のうち21人は東洋人。そのほか白人17人、ヒスパニック系3人、黒人2人である。
つまり、代表的スーパーセンテナリアン像は、東洋人女性である。そして出生場所別にみると、東洋人のうち日本人が多くを占める。
どういった要素が長寿につながるのかは現在、研究の途上で特定するのは難しいが、遺伝的要素、文化、住環境、食生活といった複数の要素がからみあっている。
長生きの傾向は遺伝する
その中で「遺伝的要素」はひときわ強いとされる。「長生きの傾向は遺伝する」というのは確からしい。例えば122歳まで生きたジャンヌ・カルマンさんのお父さんは93歳、お母さんは86歳まで生きた。その時代の平均からすると、抜きん出た数字である。
「TIAL(Total Inmediately Ancestral Longevity)」という指数がある。これは、両親(父母)と4人の祖父母の(合計6人の)寿命を合計した数値であるが、先に述べた最長寿記録を持つジャンヌ・カルマンさんの家系では477歳(平均79.5歳)。有名な科学者を例に出すと、オーゲ・ニールス・ボーア(デンマークの物理学者)は436歳(同72.7歳)、アルベルト・アインシュタインは390歳(同65歳)、チャールズ・ダーウィンは378歳(同63歳)、イレーヌ・キュリーは372(同62歳)。
TIALが高ければ「本人が長生きする可能性が高い」と推定される。ちなみにオーゲ・ニールス・ボーアは87歳、アインシュタインは76歳、ダーウィンは73歳、イレーヌ・キュリーは58歳まで生きた。
「センテナリアン」だけが持つ長寿遺伝子
さて、長寿の大きな要因が遺伝子にあるらしいということは分かったが、ニューヨークのマウント・サイナイ病院の心臓血管研究所所長、バレンティン・フスターによると130の遺伝子において、センテナリアンやスーパーセンテナリアンだけが持つ特徴が見つかったという。例えば、それらの長寿遺伝子のうち「APOE」や「FOXO3」は他の遺伝子と機能して100歳から110歳になった時に心臓疾患や、がん、アルツハイマー型認知症から身を守る働きをするという。
先にセンテナリアン、スーパーセンテナリアンが集中する地域について述べたが、遺伝的要因とあいまって効果をもたらす他の要因があることも明白だ。正しい食生活をしていて、周囲に環境汚染がないこと、健康的な生活のために自分自身をコントロールできるある程度の教育水準──これらの要因が組み合わさって長寿を支えている。
主は「人間の齢は120年を超えないだろう」と言ったけれど
人間の寿命の限界点を、科学の見地から説明するには、大きく分けて2つの観点がある。まずは“体内時計”説。生存可能年数はあらかじめ我々の遺伝子にプログラムされているというもの。そして“消耗度”説。様々なマイナス要因が生存可能年数を短縮してゆくというもので、この要因を排除できれば長生きできる、というわけだ。
一方、旧約聖書 創世記 6章3節で主は言われた。「私の霊は永久には人の中にとどまらない。それは人が肉にすぎないからだ。人間の齢は120年を超えないだろう」。
ジャンヌ・カルマンさんが達成した記録(122歳)は、神が言った120歳を2歳上回っている。前述の2つの条件(「体内時計」と「消耗度」)において、カルマンさんの身体は神の予想を超えていた結果といえるかもしれない。
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