フリーランスの仕事をグローバルな市場に持って行くと、事態はさらに複雑化する。個人的にはUpWork(旧Enlace)というクライアントとフリーランサーの仲介サイトを使った経験がある。使い方は非常に簡単で、クライアント側はやって欲しい仕事内容を掲載する。

 私が依頼した内容はあるコンファレンスのためにインパクトあるスライドに修正してもらうこと。数分後にかなりの数のオファーが来た。15から20人のプロたちが過去の作品のサンプルと見積を提示。私の国スペインはもとより、遠くはインドやバングラデシュからもオファーがあったのには驚かされた。

 インターネットの世界ではどこにいても同等の条件で競合することができ、共に働く人材に向かってかつてなかった新しい扉を開いてくれる。しかしその代償も大きい。価格競争は激烈で、欧米の価格ではその他の地域と競合することは不可能だ。

2020年には米国雇用の40%がフリーランスに

 例えば私のケースだと、バングラデシュのプロフェッショナルと今もいっしょに働いているが、彼は同等のクオリティーで他の人の5分の1の価格となっている。大企業のやるアウトソーシング(外部委託)やオフショアリング(海外委託・移管)はこれまで外側から見てきたが、クライアントとしてあるいは労働者として実際に体験してみると、考えさせられることが多い。

 この新しい形態がもたらす社会の変化、それは既に現れている。アメリカでは2020年には雇用の40%がフリーランスによって占められると予測。タクシー配車サービスUberでは、運転手たちが労働時間をめぐって被雇用者の権利を主張、これに対して会社側は別の要求を提示している。同様にFedExでは運転手は下請けとしての契約であるがFedExの制服を着ており、最低労働時間が課されている。

 当然のことながら雇用側、被雇用側も2つの対立項の中で自身に有利なものを求追求する。被雇用側は自主・独立と安定、雇用側はなるべく低い人件費と会社への忠誠。しかしながら労使双方を同時に満足させる解決策はなく、永遠のジレンマといえるだろう。

 現在台頭しつつある新しい経済の形を良しとするか、あるいは前世紀のスタイルがいいのか? 私はそれは労働者のタイプによると考える。専門職の実力あるフリーランサーは自身の手でプロジェクトを構築できる。これには危険は伴うにしても、持ち前の交渉能力でやっていけるだろう。

 その反対に経験が浅く、専門性が低い職種の労働者は、特に不景気の時にはその影響をもろに受け、過剰な労働力オファーの中で競争する力がないまま、下降線をたどる、といったことが起こってくる。

 組織に属さない、「ギグ・エコノミー」という新しい労働の形。これに関しては、労働者の権利といったことも含め、社会の中での位置づけをきちっとさせ、労働市場の中で一定の規則を作っていかなければならないだろう。