テレワークのパフォーマンス向上を可能にした要因を、以下に列挙してみよう。

在宅勤務でもオフィスと同等の成果を出せるようになった要因

■社員間のコラボレーションのためのツールの飛躍的な進化
 クラウド、ファイル共有ソフト、チャット、プロジェクト管理ツールや、会議のためのビデオ通話など──これらは以前からあるにはあったが、それらのツールのクオリティー、使いやすさ、使う側の心理が大幅に進歩した。活用のレベルにおいて従来とは格段の違いがある。

■ツールを使いこなす社員自体の大きな変化
 上記のようなツールを当たり前のように使って育った世代は、これらのツールを自然に受け入れ、自在に使いこなせる。

■企業カルチャーの変化
 米ヤフーのマリッサ・メイヤーCEOは2013年に在宅勤務を禁止したことで知られる。彼女は、その方が社員間のコラボレーションがうまく行く、と考えたからだろう。同社の人事担当者は、「最高のアイデアや意思決定はしばしば廊下やカフェテリアでの議論から生まれる」と話しており、実際にオフィスに社員が集まって働くことには、そうしたメリットがあるのは確かだ。テレワークでは会話不足などの「社内コミュニケーション・ロス」が発生することもある。
 だが、現代でテレワークを許さないことは、有能な社員を失うことにつながる。米ギットハブ社(GitHuB、エンジニアがソフトウエア共有のために使うサイトを事業展開している企業)や、米オートマティック社(世界で最も使われているブログのプラットフォーム「ワードプレス」を事業展開している企業)はテレワークという手法で、(職場の場所によって自分のライフスタイルを変えることを良しとしないような)新たな才能を獲得できる可能性が高くなる、としている。

■職場の空間デザインの変化
 従来、とりわけ欧米では、職場は社員たちの執務室の集合体として捉えられ、この閉鎖空間では社員同士が分断されていた。しかし近年、米国の大手IT企業などでは社員が顔を合わせやすいような大部屋の空間に数百人、数千人の社員を移すケースが増えた。オープンな空間とすることで、従業員同士のコラボレーションを促すのが狙いだ。こうした企業では、同僚たちとコミュニケーションをとるためにオフィスに行くのであって、もし集中して取り組みたい仕事があれば家でやるといったように、仕事をする場所を目的によって変えることも一般的になっている。

■社員の評価やマネジメント手法の進化
 結果や実績を客観的に評価することが可能となり、会社に長時間いることが評価の対象とはならなくなった。

■テレワークで成功している企業が増えた
 ブログのプラットフォーム「ワードプレス」を事業展開する米オートマティック社は、世界52か国に500人以上の社員がいて、計70カ国語が使われている。こういった新しい形態をとる企業は当初、一般企業からかけ離れた特別なケースとみられていたが、現在では学ぶべき手本となっている。
 いわゆるスタートアップ型企業だけでなく、一般企業でもテレワークを取り入れるケースは増えており、またそのやり方も様々に進化している。

生産性の高い国でテレワークの普及が進まないことはあったが…

 テレワークはオフィスのスペースの簡素化にもつながるため、開発途上国では経費節減の一環としても行われている。一方、日本を含む先進国や生産性の高い国々では、社員に対するマネジメントが機能しにくいとか、社員の集中力が損なわれるといった理由で、テレワークの導入が進まない側面があった。

 しかし、日本でも近年、働き方改革の機運が高まり、出産や育児、介護などに携わりながらでも働き続けられる環境づくりを進めざるを得なくなった。優秀な人材を確保するために、自宅での勤務を許可する企業が増えている。

テレワークに対応できない企業は、才能ある人材を得られない

 私たちは今、「労働」というもののコンセプトの再定義の真っただ中にいる。私たちはオフィスに行って働くことの利点を放棄するのではなく、さらに新たな「強み」を加えようとしているのだ。

 テクノロジーの進化が様々なツールを提供してくれているのに、これらを使わないことや、これらを拒否すること、昔ながらのやり方に固執することは、好ましくないだろう。社会の変化に対応できずに、いずれ大きな問題にぶち当たるかもしれない。

 もし、あなたの会社がテレワークを検討の射程に入れていないのであれば、ぜひご一考いただきたい。さもなければ才能ある人材は遠ざかり、生産性や会社自体の評価までもが落ちてしまうことになりかねない。