2年前の当欄に、記者は「加速する時間軸の中で、カンブリアの海に泳げ」と題して、インターネットがアイデアを実現する時間とコストを圧縮している現状を説き、インフラについて語る時代がいよいよ終わって、カンブリア紀の海に起きた“爆発”のように、多産多死でも、多彩なアプリケーションが次々に生まれ、それについて語る時代になってほしいと書きました。

 資本力はないが確かな目利きを持った商店や、営業力はないが確かな価値ある商品を作ることができる生産者が、圧倒的に低コストで決済や情報提供の手段を手に入れたら。小売りと無関係のプレーヤーが、思いもよらない手段で「買う」という体験を再発明したら…。

 QRコード決済の騒動自体は取るに足らない小さな出来事だったかもしれませんが、その騒ぎの向こうに耳を澄ますと、時代を動かす地殻変動の兆しを聞き取ることができるような気がします。アイデアと意志の力があれば、誰もが何事かを変えられる。面白い時代がそこまで来ている、と、記者はまた書かずにはいられません。

2019年、新たな試みに挑みます

 2019年、「日経ビジネス」は新たな挑戦を始めます。

 ここまでの原稿を、記者は自分に言い聞かせるような思いで書いてきました。紙で印刷して複製するプロセス、それを読者のご自宅(あるいは書店)まで届けるプロセス、決済のプロセス、郵便で顧客満足度を調べるプロセスなど、出版の世界は、まさにインターネットによって様々なプロセスが代替され得るようになりました。出版社が寡占できていたものの多くが、オープンな技術と新たなプレーヤーによって代替されています。

 QRコード決済など新たに生まれたオープンな決済手段が、チェーンストアだけでなく、生産者や個人商店に恩恵をもたらすように、情報発信インフラとしてのインターネットは、私たちメディアだけでなく、私たちが取材して来た企業や個人自身、あるいは個人で取材して情報を発信しようとする人たちをも力づけていくことになるでしょう。

 すでにかつて事業モデルを確立しているメディアとして、この変化にどう対応すべきか。何を守り、何を捨てなければならないのか。自らに問いかけながら、失敗を恐れずに挑戦します。

 この先どんなに迷うことがあっても、苦境に立つことがあっても、一つだけはっきりしていることは、ご愛読いただいている皆様のご支持が、これからも変わらず私たちの力になり続けるこということです。旧年中は日経ビジネスオンラインをご愛読いただきありがとうございました。本年も日経ビジネスをご愛顧いただきますよう、お願い申し上げます。

■変更履歴
記事掲載当初、本文中の「前者」と「後者」がそれぞれ逆のものを指していました。お詫びして訂正します。本文は修正済みです [2018/01/01 15:51]
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