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 コンビニの店舗の規模では、扱える品目数は3000前後とスーパーマーケットに比べれば見劣りするものとなってしまいます。そこでコンビニは、通信網と物流網で店舗を結び、POS(販売時点管理システム)によって単品で売れ行きを管理しつつ、その売れ行きに応じてすぐに商品を補充できる仕組みを整えることで、3000品目前後の商品のポートフォリオを商圏のニーズに合わせて徹底して磨き続ける仕組みを取り入れました。「量」として少ない品ぞろえを「質」でカバーしようと試みたのです。

 全国の店舗を専用線や光ファイバー網で結び、専用レジやストアコンピューターを導入して売れ行きや発注の情報を即時で収集する仕組みを構築すると同時に、そのニーズに答えて商品をオンデマンドで補充できるように配送センターを全国に設け、自社の配送車を走らせる。狭小店舗の出店によって「顧客が自宅から店に行く」プロセスを代替するという戦略を、経営効率を落とさずに実現するために、コンビニは、莫大な投資によって物流網と通信網を構築することで、メーカーや卸売業者の「モノを店まで運ぶ」プロセスを代替するという戦術を取ったのです。

 顧客の移動距離を1歩でも縮め、棚の無駄な商品を1つでも減らす。コンビニという業態は、この努力を垂直統合と情報化によって極限まで推し進め、かつその営みを永続的に続けている業態です。だから、強いのです。

 誰もが食品小売り業態におけるその最強を疑いませんでした。数年前、あるコンビニグループのトップが記者にこう言ったことをよく覚えています。「コンビニよりも効率の良い小型店舗業態は生まれない。なぜなら、私たち(コンビニ)自身がそうなっているはずだから」。記者はその言葉に、自信や慢心よりもむしろ、進化し続けなければ滅びるという自戒と危機感を感じました。

 もちろん今もって、コンビニという業態に停滞や衰退の影が迫っているということはありません。成長が鈍化していると言われますが、それでも圧倒的な経営効率を誇る業態と言っていいでしょう。

 ですが今、その競争優位の前提を脅かす新たな勢力が、コンビニが堅牢に築き上げた事業のプロセスを代替しようと、及ばないながらも徐々に力を付けつつあるようです。

インフラコストを顧客に転嫁

 QRコード決済、バーコード決済と呼ばれるものには大別して2種あります。1つは、上記に挙げた例のように、店舗はQRコードを示し、ユーザーがスマホアプリでそのコードを読み取ることで決済を進める仕組み。もう1つは、ユーザーが画面上にコード(多くの場合、バーコード)を表示させ、店舗のレジでこのコードを読み取って決済を進める仕組みです。

 後者の場合、電子マネーの非接触伝送の仕組みを使ったり、プラスチックカードのバーコードを読み取ったりといった手法と大きな違いはありません。今までと同じく、決済情報を伝えるインフラは「店舗のレジ」と「店舗間の通信網」です。しかし前者の場合、極端な話、店舗は紙に印刷したQRコードを店頭に貼っておけば、レジもネット回線も設ける必要がなく、キャッシュレスの決済手段を提供することができるようになります。スマホのCPU(中央演算装置)がレジのそれを代替し、携帯キャリアのモバイル通信網が店舗間の通信網を代替しているからです。