(写真:ロイター/アフロ)

 「こんなことが言われてきた。民主主義は最悪の政治形態である」。近代民主主義の源流の1つと言われる国の宰相、ウィンストン・チャーチルはかつてこう言った。「ただ、これまで試みられてきたあらゆる政治形態を除けば、だが」。

 2016年、驚くべきニュースが世界を駆け巡った。

 ドナルド・トランプ氏が米国の次期米大統領に選出され、英国はEU(欧州連合)を脱退することを決めた。フィリピンではロドリゴ・ドゥテルテ氏が麻薬犯を一掃すべく超法規的な処刑を繰り返しつつ「脱米」を宣言し、トルコではレジェップ・タイイップ・エルドアン氏が政権転覆を狙ったクーデター勢力を退け、これに関わった嫌疑をもって自身と相容れない立場の政治家や官僚を公職から解き、報道機関を監視下に置いた。

 驚くべき、というのは、それぞれの事実自体を言うのではない。これらの事実が、独裁国家の迷走ではなく、いずれも正当な民主主義の手続きを経て実現されている、という点である。

 「ポピュリズムの到来」と言われる。

 人間は、誰もがそれぞれの存在において平等であるというのが民主主義の根幹であり、だからこそ意思決定において多数決を採る。民主主義がポピュリズム化しているという批判は、「この塩は塩辛すぎる」と非難するのに似ている。

 だがなぜ、今、民主主義は暴走するのか。

 2017年の幕開けとなる今日。やや大上段な構えにはなるのは正月ということに免じてご容赦いただきつつ、20世紀の歴史を振り返りながら、その答えを考えてみたい。

 鍵は「インターネットの受肉」による「エゴノミクスの台頭」にあるのではないかと記者は考えている。

世界大戦の反省から生まれた枠組み

 2016年にはバラク・オバマ米大統領が広島を訪問し、安倍晋三首相が真珠湾で慰霊の祈りを捧げた。世界史において最も大きな惨禍の1つが第二次世界大戦だったことは論を待たないだろう。

 なぜ世界大戦が起きたのか。

 欧州諸国は、アジアやアフリカ、南米などを“発見”して支配し、それらの植民地の資源や生産力、消費と母国の経済を結び付け、富を集約しようと試みた。とりわけ世界同時不況以降、経済ブロックの外に対しては高い関税を課すなど「壁」を設けて、需給がブロック外に漏れるのを防いだ。広大な国土と資源を持つ米国は、ニューディール政策などで内需振興を進め、いわば一国ブロック経済を形成することで不況を乗り越えようとした。一方で、ドイツや日本など、植民地を多く持たない新興資本主義国は、自国の影響化にある地域を結んでもそうした経済圏を十分に形成することができなかった。

 ブロック経済を形成できた国と、できなかった国。この両者の対立が、世界大戦を引き起こした原因の1つと言われている。いずれもその根底に、他国の犠牲のもとに自国の経済を最大化することを目指そうというメカニズム、資本主義の暴走――いわば「エゴノミクス」の台頭があったと言っていいだろう。

 この過ちを繰り返さないために植民地を失った欧州が試みたのがEUであり、国際社会が設けたのが関税貿易一般協定(GATT)、のちの世界貿易機関(WTO)だった。