滝の先には豊かな多様性の海がある

 “ウォーター・フォール”を落下した果てには“カンブリアの海”が広がっている、と信じたいと思っています。

 古生代カンブリア紀と呼ばれる地質時代の、5億4200万年前から5億3000万年前の間に、突如として爆発的に生物が多様に進化し、分化したと言われています。この「カンブリア爆発」で誕生した生き物たちの形状は、奇妙でグロテスクなものが多く「カンブリアモンスター」と呼ばれることもあります。

 しかし、この「爆発」によって、いま地球上で生きる動物の「門」が出揃ったとも言われています。つまり、爆発的に多様に進化した奇妙な形状の生き物たちの、あるものが生き残り、環境に適応して、私たち人間やカタツムリに進化しました。

 優れたアイデアと実行する力があれば、国境やしがらみを越えて誰もがビジネスを生み出せる時代。豊かで奇妙なカンブリア紀の海のように、多種多様なビジネスが爆発的に生まれてくる可能性があります。2015年によく耳にしたバズワードの多くは、ビジネスを生むためのソリューションに過ぎませんでした。ではそのソリューションを使って何ができるのか。わずかにUberやAirbnbなどが拓く「シェアリング・エコノミー」という例外を除けば、アプリケーションの話を聞くことはほとんどできなかったように思います。2016年以降、用意された多彩なソリューションを使って、誰も予想できなかったようなアプリケーションが次々に具現化されて来るかもしれません。

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 カンブリアの海に生まれたモンスターたちのように、新しい発想やビジネスの大半はいずれ滅びるでしょう。また、旧時代の既存の生物に捕食されてしまうかもしれません。しかし、先進国と新興国との間にあった「時間差」がテクノロジーによってほぼなくなり――タイムマシン経営などというものを実現することが極めて困難な時代になっていることは間違いないはずです――誰もが同じ土俵で戦える可能性を持つ時代、不恰好に見える新たなビジネスの中に、次代に生き残り覇権を唱える強い種が含まれているかもしれません。

 2016年。弱肉強食の原則が覆う多様性の海に、その厳しさを恐れずに果敢に挑むプレーヤーたちが、日本から、そして新興国から、続々と、爆発的に生まれてくるような1年であってほしいと願っています。そして、日経ビジネスオンラインは、そうした挑戦者を応援する媒体でありたいと思っています。

 本年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。

 2016年元旦
日経ビジネスオンライン編集長
池田 信太朗