右がポケモンGOでのポケストップ、左がイングレスでのスポット。同じ写真が利用されていることがお分かりいただけるだろう。

 つまり、ポケモンGOはイングレスの技術をベースにカスタマイズされたゲームなのだ。

 ではイングレスとポケモンGOの違いは何なのか。ポケモンという「IP(知的財産)」の有無だ。

 イングレスは熱狂的なファンやボランティアに支えられたゲームだ。「イングレスによって外に出るようになって引きこもりが治った」と、いまポケモンGOで報じられているようなこともすでに言われていたし、日本マクドナルドがナイアンテックと交わしたスポンサード・ロケーションの提携も、イングレスではローソンがすでに交わしていた。

 だがポケモンGOのようにはユーザーの裾野は広がらなかった。イングレスでは超えられなかったキャズム(市場に普及するまでの大きな溝)を、技術的な基盤を共有するにも関わらずポケモンGOは易々と超えてしまったのだ。その差を生み出したのが任天堂が関連会社を通じて抱えるIP――100種を超えるかわいらしいポケモンの存在だったと言えるだろう。

 2015年3月、任天堂の故・岩田聡前社長は、スマホゲームの開発に着手したタイミングで本誌・井上理記者のインタビューに応じている。このインタビューで語っているのは任天堂とDeNAとの提携についてだが、岩田前社長のスマホゲームやIPに対する考え方がよく理解できるので引こう。

我々はこの30年間、IPによる収益を短期的に最大化させるというより、傷を付けずに育てていくことを丁寧にやってきました。幸運にも恵まれ、自分たちの努力が合わさった結果、IPの価値を積み上げ、維持できている自負があります。そのおかげで、任天堂IPのライブラリーは世界一豊富だと言っていただけているわけです。

任天堂・岩田聡社長激白、「時が来た」-DeNAとの業務・資本提携に至ったすべて(前編)

 2015年11月、任天堂が新商品「Miitomo(ミートモ)」を発表し、その内容について市場やメディアが失望感を示したことを受けて、井上記者は「任天堂、復活の狼煙 「主役」はまだ温存 後ろに控えるマリオ・ポケモン」という記事も執筆している。見出しにあるように、ミートモが任天堂のスマホ戦略における第一歩に過ぎず、IPという強力な武器を備えた「次」が出てくることを予測した記事だ。

 インターネット、全地球測位システム(GPS)、AR(拡張現実)などの既存技術を飛躍させ、キャズムを超えさせたのはIPだった。「ただのキャラクタービジネスではないか」と笑うことはたやすい。だが、既存技術の組み合わせにデザインと世界観を与えることで生み出されたiPhoneの巨大市場を思い起こしてほしい。キャズムを超えるうえでデザインやIPの持つ意味の大きさを思わずにはいられないはずだ。

ポイント3:ポケモンGOの課金に射幸性はない

 ポケモンGOの運営会社は販売と広告、両輪の収益を得ている。ユーザーが必要に応じてアイテムを購入する代金、すなわち販売収入と、スポンサー企業からの広告収入だ。後者は上記の通り。前者の販売収入をもたらすユーザー課金の仕組みは非常にシンプルなものになっている。

 ユーザーは「ポケコイン」と呼ばれるゲーム内通貨を購入する。100ポケコインは120円、2500ポケコインは2400円。最大1万4500ポケコインを1万1800円で購入できる。アップルのiTunes StoreとGoogle Play経由で決済される。このポケコインを消費することで、ポケモンを呼び集めることができる「ルアーモジュール」やポケモンを捕獲する際に使う「モンスターボール」などのアイテムを獲得できる。

 ポケコインで獲得できるほとんどのアイテムは、よく「歩く」ことでも無料で得られるものばかりだ。利用料を払わなければできないことはほとんどない。

 何より特質すべきは、一般に「ガチャ」と呼ばれる、一定の確率で出るキャラクターやカードを獲得するための「くじ」の要素がこのゲームにはまるでないことだろう。