これをリアル店舗のマーケティングに活用しようという動きがすでに見られる。

 7月22日以降、「こちらポケストップです」「休憩しながらポケモンを捕獲できます」などのメッセージを掲げる飲食店が現れた。また、ユーザーは「ルアーモジュール」と呼ばれるアイテムを使うことで、一定時間、特定のポケストップにポケモンを呼び集めることもできる。「これから30分間、ルアーを使ってポケモンを集めます」などと告知することで集客を試みる飲食店も見られた。

 企業同士の提携も始まっている。

 本誌が配信した記事「「ポケモンGO」をマクドナルドFCが喜ぶある事情」でも触れているように、日本マクドナルドの店舗がポケモンGOの「ポケストップ」などに設定された。ポケモンGOは、米ナイアンティックと任天堂の関連会社であるポケモンが共同開発・運営している。この2社と日本マクドナルド・ホールディングスの提携によるものだ。

 ポケモンGOのユーザーは、アイテムやポケモンを求めて町を歩き、マクドナルドの店舗に集まる。のどが渇いていれば飲み物を買うかもしれない。空腹であればハンバーガーを買うかもしれない。疲れていれば休みたくもなるだろう。元気いっぱいで満腹でも、少なくともマクドナルドの店舗に掲げられている新商品の告知は目にすることになる。

 日本マクドナルド・ホールディングスの広報担当は「すべての店舗というわけではないが、ポケモンGOの配信以来、複数の店舗で通常よりも多くのお客様にご来店いただいている」と「集客効果」を認める。3社の提携については「契約内容について回答できない」とのことだが、このマーケティング上の効果を得るために、日本マクドナルド・ホールディングスから宣伝広告費のようなかたちでの協賛が開発会社2社にもたらされたと考えるべきだろう。ナイアンティックは、こうした「場所」に対してスポンサーを付ける広告商品を「スポンサード・ロケーション」と呼んでいる。

 ポケモンGOの流行が定着すれば、通行量を前提にした「立地」の考え方も一部で覆る可能性がある。駅前や角地が商売上の一等地であったように、希少性の高いポケモンの巣に近いということが商売を有利にする可能性も出てくるだろう。

 「人を動かさない」で「モノを動かす」マーケティングから、「人を動かす」ことによって消費を促そうというマーケティングへ。この懐かしき発想の逆転が、鮮やかに消費者の心をつかんでいる。

ポイント2:ポケモンGOはIPでキャズムを超えた

 ポケモンGOはゼロから生み出されたゲームではない。開発の元となったのはナイアンティックが開発・運営する「イングレス」だ。ポケモンGOと同じく、現実の地図のうえに仮想の世界を描き、ユーザー自身が「動く」ことに対するインセンティブを用意する。

 ポケモンGOでは、現実の建造物などが写真つきでポケストップに登録されているが、これは先行してサービス提供していたイングレスのものを流用している。イングレスでは、条件を満たしたユーザーがスポットを登録することができる。数年間で蓄積されたスポットデータが全国にあるからこそ、ポケモンGOは、サービス開始当初から、数多くのポケストップを用意できた。