経緯や詳細は別掲記事(「DeNA守安社長、独自インタビューで胸中明かす」)などに譲るが、村田氏がシンガポールから指揮を執っていたキュレーション事業は結果として、DeNAに深刻なダメージを負わせた。
ヘルスケア・医療関連のキュレーションサイト「WELQ」に端を発する一連の問題は、DeNAが運営する10サイトすべてを休止するという事態に発展。同社の社会的な信用は地に落ちた。

炎上の直接的な原因は、WELQをはじめとする急成長していたキュレーションサイトに、根拠が不明確で、外部の記事・画像の無断利用やコピー、リライトが疑われる記事が多数あったこと。そして、クラウドソーシングを通じて低単価で確保した外部ライターへのマニュアルに、リライトを助長するような文言があった事実が暴かれたことである。
そうした問題行為が組織的なものなのか、誰の指示なのか、いまだにあらゆることが分かっていない。3時間超に及んだ謝罪会見でも、守安社長は「第三者委員会」の調査に委ねるという回答に終始した。だが、「いい加減かつ検索エンジンに最適化された記事を安価に大量生産する手法」に問題の根があることは間違いない。そして、iemoとMERYを買収するまで、そうした手法や発想はDeNAになかった。
断っておくが、本稿の目的は個人や人格を攻撃することではない。何がDeNA転落の起点となったのかを検証することにある。買収当時をよく知る関係者へ取材すると、2つの過ちが炙り出されてきた。
「伸びてます。ヤバいです。買ってください」

2014年7月下旬、福岡ヤフオク!ドームの隣にある高級ホテルで、ベンチャーの起業家や投資家が集うイベント「B Dash Camp」が開かれていた。守安社長は、ここで村田氏と出会った。
このイベントがiemo・MERY買収のきっかけとなったという事実は広く知られている。翌年の同イベントで村田氏とともにパネルディスカッションに参加した守安社長は、「(村田氏から)パーティー会場で『iemoが伸びてます。ヤバいです。是非、買ってください』と率直なオファーを頂き、その場で(買収の)検討を始めた」と壇上で話している。
問題は、この買収にDeNAや守安社長の「焦り」が絡んでしまった可能性があることだ。
関係者によると、パーティー会場で守安社長を見つけた村田氏は、矢継ぎ早にプレゼンテーションを始めた。「インテリアでキュレーションをやっています」と事業を紹介した村田氏は、「iemoのMAU(月間利用者数)はこう伸びています」「米国には似たようなインテリアに特化した『ハウズ』というのがあって、2000億円の時価総額があります」「今、資金調達するか、バイアウト(売却)するか悩んでいます。守安さん、買収はあり得ますか?」などと畳み掛けたという。
村田氏は、中川氏率いる女性ファッション関連のMERYも紹介した。抱き合わせでの買収を検討した守安社長は、村田氏のプレゼンテーションからわずか2カ月後の9月末、2社、50億円の買収を決断。10月1日に発表された。
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