ただし、ポケモンGOはイングレスの世界観を引き継いでいるとは言え、ポケモンの人気やブランド力がなければ、ここまで世界中の人々を熱狂させることはなかっただろう。

 その意味で、ポケモンとナイアンティックの出会いを演出した任天堂前社長の故・岩田聡氏の功績は大きい。

 ポケモンGOは、岩田氏とポケモンの石原恒和社長が2年越しで温めてきたプロジェクトだった。岩田氏は、同時並行で、任天堂として単独で開発・配信するスマホ向けゲームアプリの開発も指揮していたが、陽の目を見る前の昨年7月にこの世を去った。

 しかし、岩田氏の「遺志」は確実にポケモンGOに反映されている。

 「ゲーム人口拡大」を掲げ、「ゲームが社会や子どもの親から嫌われない」ことを目指した岩田氏。それを「ニンテンドーDS」や「Wii」で実現してみせたのは周知の通り。ユーザーを外に連れ出すことにも挑戦した。例えば「すれちがい通信」というDSの機能では、現実世界ですれ違ったユーザーと交流できる新たな楽しみ方を広めた。

 “普通”のユーザーをかつてない勢いで外に連れ出しているポケモンGOは、まさにこのゲーム人口拡大を大きく前進させた、と言える。

「世界中に広がり得る娯楽にチャレンジしたい」

 あまりに多くのユーザーが一気に野外を出歩くようになったため、安全面での懸念など新たな課題も指摘されているが、半面、「外を出歩くようになり、肥満が解消できそう」「家にこもっていたが、外に出ることで、うつ病が治りつつある」といったユーザーからの報告もツイッターなどに次々と投稿されている。

 スマホ向けゲームの課金のあり方についても、ポケモンGOは岩田氏の遺志に沿っている。岩田氏は、「射幸心を煽り、少数のユーザーから多額の課金を得る」というモバイル向けゲームの主流だった課金手法を暗に否定し、生前最後のインタビューではこう話していた。

 「『広く浅く』から課金していただけるようなゲームが作れた時、本当に社会に受け入れられたことになり、そして世界中に広がり得る娯楽になると思っているんです。そこにチャレンジしたい」

 「実現できたらかっこいいと私が思うのは、『任天堂は新しいビジネスモデルを確立した』と言ってもらえることだと思います」

昨春、インタビューに答える任天堂前社長の岩田聡氏(撮影:小倉正嗣)