ミツハシ、厳しいな

ミツハシ:考えるまでもないじゃないですか。シマジさんも現役時代には、自分の編集部を精鋭で固めて、やる気がないと判断した編集者は異動させていたじゃないですか。

シマジ:週刊誌というのは熾烈な戦場だからな。

ミツハシ:それは相談者の職場も同じです。

 「私の頭や要領が悪いのです」って何を甘えたことを言っているんですか。生まれつきの能力の問題だから大目に見てほしいとでも言いたいんですか。

 相談者は営業日誌に「知識が足りない」と書かれているんでしょ。営業センスはさて置き、業界知識や商品知識なんていうのは努力次第じゃないですか。経験やネットワークの面では先輩たちに敵わないとしても、勉強次第で先輩と同じレベルになれる土俵はあるはずです。

 自分にできる努力を尽くした上で、それでもうまくいかないことがあるなら、「どうしたらいいでしょう」という相談も分かりますが、相談者は一体どんな努力をしたと言うんです。幸い先輩たちは営業日誌に、相談者のどの部分がダメなのかを書いてくれているわけでしょ。ならば、相談者はシマジさんではなく、まずは先輩たちに自分は何をすべきか教えを乞い、それを実践すべきでしょう。

シマジ:ミツハシ、厳しいな。

ミツハシ:普通です。

シマジ:世の中にはこの相談者のように弱い人間も多くいるんだよ。そんな相談者に厳しい言葉を投げかける先輩は多くいるはずだから、直接の利害のない俺は優しく励ましてやりたいんだ。

 過去形で「会社で一番の営業マンになった」と毎晩口にしていれば、神様だけじゃなく、当の相談者だってそうではない現実との間で、これではまずいと思うはずだ。学ばなければ、努力しなければと焦るはずだ。俺は相談者の自助努力を期待してさっきのアドバイスをしたんだよ。

ミツハシ:……。

シマジ:ミツハシ、なんだその疑いの目は?

シマジさんはこの女と結婚したいと思いますか?

ミツハシ:本当にそんな深謀遠慮があったんですか?

シマジ:もちろんだ。人生は可能性に溢れている。相談者が「会社で一番の営業マンになった」と言い続け、その自分の言葉に恥じない会社員生活を送ろうと思えば、キミは勤め先の社長にだってなれる。まずは言葉にし続けるんだ。

 「会社のすべての商品を完璧に頭に入れた」「1000万円の新規契約を獲得した」「2016年度のナンバーワン営業マンになった」。そう言い続けなさい。そこから相談者の成長が始まる。キミはまだ26歳だ。時間はいくらでもある。俺のアドバイスを信じて努力をすれば、少々要領が悪くても愛され、信頼される営業マンになれる。健闘を祈っているぞ。

ミツハシ:いいでしょう。叱るのではなく、褒めてその気にさせて部下の力を引き出すのがシマジさんのやり方ですから。でも次の相談にはどう答えますか?