世の中に大量の「乗り移りロス」を生み出すぞ

シマジ:それにしても、全国の悩める善男善女をどうするつもりだ。世に悩み事のタネは尽きまじだぞ。

ミツハシ:「週刊文春」の伊集院先生にお任せしますか。

シマジ:ミツハシ、随分冷たいじゃないか。「乗り移り」は他に比肩するもののない人生相談だぞ。この7年、相談に答えた男女から多くの手紙やメッセージをもらい、また、伊勢丹メンズ館のサロン・ド・シマジに、「乗り移りの回答ありがとうございました。おかげで光が見えてきました」と感謝の言葉を伝えに来てくれた相談者も数多くいた。相談者じゃなくても、「読んで元気になりました」と言ってくれた読者も数え切れない。このままでは世の中に大量の「乗り移りロス」を生み出すぞ。

ミツハシ:「乗り移りロス」ですか。実は私にもそれが起こるのではないかとちょっと心配しているんです。何しろこの7年、毎月一度はシマジさんと4~5時間に及ぶ濃密な時間を過ごし、毎週末3~4時間をかけて「乗り移り」を執筆してきました。それがなくなるというのは何だか張り合いがなくなるようで。

シマジ:そうだろ。なんとか「乗り移り」を愉しみにしている読者の期待に応えられるよう考えようじゃないか。

ミツハシ:そうですね。ただ、私も新しい仕事との兼ね合いもありまして……。でも、「乗り移り」読者も大切にしたいですし。一緒に今後のことを考えましょう。

 さて、遅くなりましたが、今週の相談に乗りましょうか。

「もっと現実を直視してもらった方がよくないですか」

シマジ:相談者はきっと大器晩成なんだよ。周りから頼りないと思われているようだが、「みんな優しい」と書いているように、周囲の人たちは相談者が成長してくれることを期待しているはずだ。きっと素直で人柄がいいのだろう。底意地の悪い奴というのは組織の中で嫌われる。相談者はそういうタイプではない。頑張って成果を上げれば、周囲の見かたはすぐに変わる。

ミツハシ:その「成果の上げ方」が問題なわけで。どうすれば相談者は成果を上げられる営業マンになれると思いますか。

シマジ:毎晩寝る前に「俺は会社で一番の営業マンになった」と口にするんだ。丹田に両手を置いて力強く語る。過去形で言うことが肝心だ。天上界の神様は、人間どもの際限のない願い事を叶えるのに多忙極まりない。神様のウェイティング・リストは膨大な長さになっており、相談者が「会社で一番の営業マンにしてください」とお願いしたとしても、超多忙な神様がそれを叶えてくれる保証はない。だから、過去形で言葉にするんだ。

 「会社で一番の営業マンになった」という言葉を聞いて神様は慌てる。ん、俺はそんなことをしてやった覚えはないぞ。それなのに、こいつはその気になっている。早く現実にしてやらないとまずいなということになる。かくして相談者はナンバーワン営業マンになれる。

ミツハシ:シマジさんらしい優しいアドバイスですが、この相談者にはもっと現実を直視してもらった方がよくないですか。シマジさんが営業部長だとして、この相談者を部員として使いたいと思いますか。

シマジ:うーん。ちょっと考えさせてくれ。