夫婦でゴルフをするというセンスが理解できない

ミツハシ:半世紀の長きにわたって奥様はよくシマジさんとの生活に耐えてきましたね。

シマジ:正反対の男女だからうまくいったのかもな。よく「似たもの夫婦」なんていうが、夫婦の趣味が同じというのはよろしくないと思うね。「もっと脇を締めて」「うるさいわね。ちょっと黙ってて」なんて喧嘩しながらゴルフをしている夫婦をよく見かけるが、面白くもなんともないだろうな。

ミツハシ:いや、本人たちは意外と愉しいのかもしれませんよ。

シマジ:そうは思えないがな。何より、夫婦でゴルフをするというセンスが理解できない。スコットランド人たちは、女房から逃れて自由な時間を満喫するためにカントリークラブに向かうんだ。だから、必ずしもゴルフをしなくてもいい。事実、クラブハウスのバーで日がな一日ポーカーに興じているなんていう紳士も少なくないんだ。そんな場所に女房を連れて行くなんて、スコットランドの先人たちに申し訳ないじゃないか。

ミツハシ:カントリークラブというのは男たちの隠れ家というか避難場所だったんですか。

シマジ:左様。俺にとってのここ、サロン・ド・シマジ本店みたいなものだ。

 そうそう、実は、年末に女房が倒れたんだよ。ここで仕事をしていたら、夜中の12時前に女房から「苦しい」と電話があって慌てて母屋に戻ったら、女房がぶっ倒れていてね。救急車を呼んで病院に向かい、そのまま入院してすぐに手術となった。詳しいことは省くが、もともとの持病が悪化した結果だったんだが、あのときは恥ずかしながらオタオタしたね。

 幸いなことに手術は成功し、1週間ほどで無事退院できたのだが、女房がいなくなってよく分かった。俺は家のことが何もできない。

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