俺と女房は水と油の性格なんだよ

ミツハシ:でも、人生は恐ろしい冗談の連続だというのはシマジさんの言葉ですよ。70歳半ばを過ぎて、シマジさんが奥様に愛想を尽かされる可能性だってゼロじゃないはずです。

シマジ:もちろんそれは否定しない。だが、まあ大丈夫だろう。

ミツハシ:なんですか、その根拠のない自信は。

シマジ:俺と離婚する気ならとっくにそうしていたはずだ。それくらい、俺と女房は水と油の性格なんだよ。俺はこの通りの浪費家だが、女房はしっかり者のしまり屋だ。俺はうまい食い物も気持ちのいいセックスも貪欲に求め続けてきたが、女房は、美食への執着が薄く、セックスも同様。

 例えば、一緒に女房の故郷で、俺の疎開先である一関に行くとき、俺は新幹線のグランクラスを予約するが、女房は俺の横に座るのが嫌だと言って普通の指定席のチケットを買うんだよ。グランクラスならうまい弁当も出てくるし、広々として座り心地のいい椅子で寛ぎ、ゆっくり本を読みながら旅ができる。なのに、女房は「チンドン屋みたいに目立つ恰好の人の横に座りたくない」と言うんだ。

ミツハシ:チンドン屋とは容赦ないですね。

シマジ:失礼な話だろ。

 少し前に娘の墓参りに行ったときのことだがね。俺たちは毎月欠かさず、月命日に娘の墓参りをしているんだ。そして俺はいつも、娘の墓に向ってそこに娘がいますがごとく話しかけている。その日はちょうど原稿の締め切りがピークを迎えていてね。思わず墓に向ってこう語りかけていたんだ。

 「パパはこの通り、締め切りに追われている。いまはまだ何とかなっているが、そのうちアイデアが枯渇して書けなくなるかもしれん。どうか天国からパパを見守り、これからも泉のごとくアイデアが湧き上がってくるよう応援してくれ」

ミツハシ:すごいですね。今東光大僧正やシバレン先生になら分かりますが、娘さんにも「アイデアが湧き上がるよう力を貸してくれ」ですか。

シマジ:ミツハシ、お前、俺の女房と同じ感性だな。

ミツハシ:えっ?

シマジ:うちの奴も、俺が娘の墓に向って語った言葉を聞いて、「あなた、おかしいわよ」と言うんだ。「死んだ娘にまでお願いごとをする父親がいますか」とね。女房は両親から「墓に頼みごとをしてはいけない」と教えられたそうだ。俺は今東光大僧正から「墓に向かって故人がいますがごとく語りかけろ」と教えられた。何から何まで180度違う夫婦なんだよ。

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