夢中になれるというのは一種の才能

ミツハシ:そういうことで、今回の相談に戻りますね。さて、相談者は赤点まみれの娘にどう接すればいいと思いますか。

シマジ:相談者は「アホではないと信じたいです」と書いているが、その通りだよ。親から「お前はアホだ」なんて言われ続けた子どもが真っ直ぐ育つはずがない。親バカと言われようが何だろうが、親はわが子を信じてあげなくてはいけない。

 だいたい「そこそこのレベル」の高校に去年の春に合格して入ったわけだから、勉強が全くできないわけがない。相談者が書いているように、部活動に忙しく、勉強どころじゃないのだろう。つまり、相談者の娘にはいま熱中するものがあるということだ。

 俺も子供の頃は面白い本に熱中して勉強どころじゃなかったからね。小学生時代に「アルセーヌ・ルパン」に夢中になり、中学生時代には「シャーロック・ホームズ」に熱中し、高校時代にはサマセット・モームに心を奪われ、睡眠時間を削って読書に耽溺した。そのせいで朝はなかなか起きられず、遅刻の常習犯だった。英単語や歴史年代なんかを覚える時間があるなら、1ページでも先へと本を読みふけっていたから、学校の成績は決して良くなかった。それでも俺くらいにはなれる。

 相談者も社会の中で50年も生きてきたのだから分かるだろうが、学校の成績と社会を生きていく能力は別物だ。学校時代に勉強はよくできても、社会に出たら仕事はからっきしという人間は少なくないからな。

ミツハシ:シマジさんを見ていると、人間関係の構築力と問題発見能力が仕事で成功するカギを握っていると感じます。問題発見能力なんていうと大仰ですが、おもしろいことや人、そして美しいものを見つけ出して売れる企画に結びつけるシマジさんのセンスは問題発見能力に他ならないでしょうからね。

シマジ:そうした生きていくうえで必要な能力が娘さんに備わっているなら、あまり心配する必要はない。これまでの日本の会社というのは大学卒業生を一括採用し、終身雇用の前提のもと海のものとも山のものとも知れない若者に1から仕事を仕込んできた。そうした大量一括採用の時代には、効率的な人材採用のために学歴を能力の目安に使うことはある程度合理的だったのかもしれない。だが、働き手となる若者がどんどん少なくなり、その気になれば誰でも大学に入れる時代にあっては、学歴なんてほとんど意味を持たなくなるんじゃないか。

 単純な労働が機械に置き換わるだけでなく、複雑な仕事もコンピューターに置き換わるというじゃないか。これからは、仕事でしっかり稼ごうと思ったら相当な専門性が必要だろうな。あるいは、心から好きだと言える天職を見つけられるなら、幸せな職業人としての道を歩めるだろう。いずれにせよ、すべてはこれからだよ。高校1年生なんて可能性の塊だ。娘が力を発揮できる道を歩んでいけるよう褒めて励ましてあげるのが父親としての相談者の役割だと思うね。