斎藤:大山社長が責任を取るとおっしゃっていましたが、うまくいかなかった社員の処遇はどうされていますか?

大山:当社は失敗した社員の方が日が当たっているんですよ。一番大事なのはリベンジです。失敗したら、次は失敗しないようにと考えるでしょう。

 だから、敗者復活をよくやるんです。失敗した当初はしばらくその部署から外れてもらいますが、1年、2年たつと、また違う部署でバッターボックスに立ちます。

斎藤:少しの期間外して、もう1回チャンスを与えるということですね?

大山:クールダウンして反省する期間は必要ですから。アイリスは人事異動が激しいのですが、それはダメ出しの人事異動ではなく、チャンスを与えるためです。

地方でオンリーワンの企業を目指す

斎藤:大山社長は、オイルショックの時に大阪から宮城県に工場を移され、仙台に本社を置いています。どのような思いで、地方で会社を経営されていますか?

大山:当社は東京都区内にもオフィスがあります。東京を否定するわけではありませんが、東京に勤めている社員には申し訳ないなと思っています。圧倒的に地方の生活の方が豊かなんです。満員電車に乗らなくていいですし、子育てもしやすい。

 なぜ日本は東京に企業が一極集中しているかというと、効率がいいからです。でも、効率の良さは社員のためではなく、上層部のためではないでしょうか? 社員も会社のユーザーです。社員にとって働きやすい環境はどこだろうと考えて、経営者は会社を置く場所を決めるべきだと思います。

斎藤:地方での起業は、東京とは違う難しさがあると思います。地方発のベンチャー企業の経営者はどういう意識を持つことが大事でしょうか?

大山:地方を植物に例えますとね、大地があり、水はあるんです。でも肥料が足りない、太陽が降り注がない。太陽はマーケット、肥料は技術です。それらがないので、地方ではなかなか大きく育たず完熟しないんです。

 地方のベンチャー企業は東京の企業の真似をしないことが大事でしょう。オンリーワンであることです。地方には地方の良さが絶対にあるんです。東北は雪国で米がおいしい。農家の比率が高い。だから当社は、その強みを生かしておいしいお米を商品化しました。もしこれが仙台ではなく大阪だったら米を使おうとは考えません。強みを生かすことが大事なんです。

地方ベンチャーの生きる道について語り合った、大山社長とトーマツ ベンチャーサポートの斎藤氏(写真:新関雅士)
地方ベンチャーの生きる道について語り合った、大山社長とトーマツ ベンチャーサポートの斎藤氏(写真:新関雅士)

斎藤:地元でオンリーワンの商品を作って強くなり、大きな市場を引き寄せればいいのでしょうか?

大山:いえ、市場に出向かなければならないんです。大きな市場は東京だとしても、中途半端なところで進出したら、家賃が払えずに撤退することになります。ですから、まず、地元でナンバーワンになり、次は東北全体でナンバーワンになる。そして、実力がついたところで東京に出ていく。一歩一歩攻めることが大事です。

斎藤:どうしても若い経営者は、東京進出を目指します。地方にいることのカッコ悪さ、引け目があるのだと思いますが。

大山:東京にはあまりに大きなマーケットがありすぎますから、便利屋でもそこそこ食べていけます。でも、便利屋は便利屋以上には大きくなれません。そこ止まりで、景気が悪くなったときに淘汰されてしまいます。

 確かに、ビジネスチャンスは東京の方が大きいでしょう。1000人に1人しか買わない商品は東北では成り立たないですが、1万人に1人しか買わない商品でも東京なら成り立ちます。だから、商売の根が浅くなるんです。

 前回お話ししましたが、オイルショックで会社が倒産しかけた時、私は大阪から宮城県に工場を集約する判断をしました。もしこれが逆で、大阪に残る判断をしていたら、今の会社はないでしょう。

 仙台よりも大阪の方が、生きていく術は多いんです。仙台には何もなかったから、本気で考え、自分たちで新たな市場、新たな商品を作り、育て上げるしかありませんでした。

 地方で商売をしようとすると、根を深く掘り下げないといけません。だから、地方発のベンチャー企業は強い。不況時でも生き残れる底力があるのです。

(構成:尾越まり恵、編集:日経トップリーダー

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